[原子力産業新聞] 2000年4月13日 第2033号 <5面> |
[原産] 「電力自由化と原子力発電」アンケート結果16か国・34電力会社から回答1面所報のとおり、原産会議は5日、定例の「世界の原子力発電開発の動向」調査に合わせ実施した「電力市場自由化と原子力発電」に関するアンケト調査の結果を発表した。そこでは回答を寄せた16か国・34社の電力会社の全てが「市場自由化の中でも原子力発電が存続できる」と回答していることが分かった。今号ではそのアンケート結果を紹介する。なお、回答した国の電力会社数は米国(10社)、ドイツ(6社)、カナダ(2社)、スイス(2社)、フィンランド(2社)、スペイン(2社)のほか、オランダ、スロバキア、リトアニア、アルメニア、スロベキア、中国、台湾、ポーランド、イスラエル、エジプト10か国についての回答は1社だった。 世界的な電力市場自由化という流れの中で、各国の電気事業は大きな変革を迫られており、今後の原子力発電開発に影響が出てくることは必至の状況となっている。当会議は、こうした状況を踏まえ、「電力市場自由化と原子力発電」をテーマにアンケート調査を行った。16か国34社(原子力発電所を計画中の国を含む)から有効回答が得られた。それによると、回答した全社が市場自由化の中でも原子力発電が存続できると考えていることが明らかになった。また、原子力発電を将来のオプションの一つとして考えているとの回答も24社からあり、全体の7割を占めた。一方で、「政府の政策が反原子力である」「べースロード電源は不要」「経済的に不確実」などの理由から、8社が原子力発電を将来のオプションとして考えていないと回答した。 ガス火力が有利に「自由化の中で有利になると思われる電源について」具体的に聞いたところ、コンバインドサイクル発電を合むガス火力が最も多く14社あった(複数回答、以下同)。原子力発電をあげた電力会社は8社あったものの、「政治的な障害が取り除かれるとの前提」(ドイツ1社)、「既存の原子力発電所」(ドイツ1社)、「長期的にみると有利」(米国2社)の意見が添えられた。一方、市場自由化の中で不利になると思われる電源については、国によってバラツキが大きく、再生可能エネルギーの購入が比較的進んでいるドイツでは、3社が風力や太陽エネルギーなどの再生可能エネルギーが不利になると回答した。原子力発電が不利になると回答した電力会社は7社あった。石炭火力をあげた電力会社も6社あったが、このうちの4社が米国の電力会社であった。 原発−環境面と供給安定性に利点原子力発電所にはどのような利点があると思うか聞いたところ、「環境面」と回答した電力会社が最も多く24社、これに「供給安定性」15社が続いた(複数回答、以下同)。「経済性」の面で利点があると回答した電力会社が10か国・15社あった。これ以外では、(燃料コストの占める割合が小さいことによる)「コストの安定性」5社、「供給源の多様化」4社であった。 原子力発電所の新規発注に際しての導入の障害について質問したところ、投資コストが大きいことなどによる「経済的要因」をあげた電力会社が最も多く13社、以下「国民の理解(が不十分)」9社、「政治的な反対」8社、「許認可手続き(が複雑)」6社、「放射性廃棄物の処分問題(が未解決)」5社−などとなっている(複数回答)。このほか欧州の電力会社からは、「電力需要の伸びがそう大きくないためベースロード用の新規電源(としての原子力発電所)は必要ない」との回答が3社から寄せられた。 新型軽水炉に関心将来、原子力発電所を建設するとした場合の単機出力については、100〜150万kWとする回答が最も多く、18社から寄せられた。このほか、50〜80万kWが適切と考えている電力会社も5社あった。また、「(新規に建設するとした場合)どのような炉型を採用するか」との質問に対しては、カナダの電力会社から回答のあったCANDU炉を除き、ほぼすべてが軽水炉であった。なお、各原子炉メーカーによる最近の新型炉開発の動きをにらみ、EPR(欧州加圧水型炉=独シーメンス社と仏フラマトム社が共同開発中、150万kW)やSWR1OOO(BWR・100万kW、シーメンス社が開発中)、ABWR、改良型PWRなど、具体的な炉型を回答してきた電力会社が10社あった。高温ガス炉(HTGR)を候補としている電力会社も2社あった。 新規に建設する原子力発電所に求められる特徴について質問したところ、「経済性の向上」と「安全性の向上(受動的安全性を含む)」がほぼ同数のそれぞれ16社、14社となり、他の回答を大きく上回った(複数回答)。「許認可のしやすさ」や「標準化された原子炉」「信頼性の向上」などをあげる電力会社もあった。 取り組み消極的な環境問題「市場自由化は電力会社にとって有益か」という質問に対しては、短期的にみた場合、長期的にみた場合とも、ほぼ半数が有益と回答した。また、市場自由化が消費者に与える影響についても、半数を超える電力会社がプラスの影響をもたらすと回答した。市場自由化の中で、「経済性」「供給安定性」「多様性」「環境対策」の4項目について経営戦略上の優先順位を聞いたところ、「経済性」を一位にあげた電力会社が最も多く14社、次が「供給安定性」の10社であった。「温室効果ガスの排出削減を経営戦略の中に入れている」とした電力会社が26社あった一方で、「環境対策」を優先順位の一位と回答した企業はわずか1社に過ぎず、市場自由化の中で環境問題への取り組みが積極的でない現状が明らかになった。こうした市場自由化への具体的な対応策としては、「人員の削減をともなうコスト削減」「高コストの発電所の閉鎖」「電力の輸出入」「発電や送・配電など一部事業からの撤退」「合併・買収」「外国市場への参入」「出力増強」「運転認可の延長」などの回答が寄せられた。 今後の電力需要については、26社が伸びると予測した。これに対し、電力需要が伸びないと予測した5社のほとんどが欧州の電力会社であり、このうちの3社がドイツの電力会社であった。カナダと米国の電力会社はすべて電力需要が伸びると予測した。 新規発電所の建設が必要と回答した電力会社は21社、必要でないと回答した電力会社は8社であった。必要ないと回答したほとんどが欧州の電力会社であり、うち6社はドイツの電力会社であった。
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