[原子力産業新聞] 2000年4月13日 第2033号 <6面>

[学術会議] 「安全学」の構築を提言

専門職の「倫理」も重要

日本学術会議(吉川弘之会長)はこのほど、「安全学の構築に向けて」と題する提言をまとめた。山陽新幹線のトンネル崩落事故やJCO臨界事故など社会的に大きな影響を与える事故か相次いで発生したことを受け、同会議では昨年11月に「安全に関する緊急特別委員会」(久米均委員長・中央大教授)を設置し、学術として如何に対応できるか検討してきたもの。技術の巨大化や生活環境のグローバル化などに伴い、単に工学的なアプローチだけでは安全問題に対応することは困難になってきているとして、従来の安全工学の枠を超えたより広い立場からの「安全学」の構築を提案している。

報告書は、人工物あるいはその影響によってもたらされる事故で、組織活動の欠陥により発生するものを対象に取り上げており、昨今の原子力に関連した事故については、技術的に困難と思われる事柄ではなく、技術の片鱗といえるところで不用意なトラブルを発生させ、そのトラブルが原子力産業全体に極めて深刻な影響を与えていると問題を提起。システムの機能性能から安全への重点の移動やシステムの弱点の解析、事故に学ぶシステムと事故を正しく調査するシステムの構築等安全のマネージメントの改善策などを盛り込んでいる。その中で、安全管理者の責任や事故責任の取り方について、「安全管理者はその責任を全うできる地位におかれなければならない」とするとともに、大きな事故が発生した場合、事故の組織面からの要因が明らかにならないまま組織の長の辞任によリ責任がとられるというしきたりの見直しが必要であると言及。

さらに、JCO臨界事故の際にも問題となった技術者の倫理や規制のあり方にも触れ、技術の役割が大きくなるに従って、技術者には一般人が行動する際の模範となる倫理とは別の「専門職としての倫理」がこれまで以上に必要になってきていると訴えている。また、規制の監査技術の改善と、監査者は常に国民に代わって公衆の安全・健康および福祉を確保する立場にあることの自覚と使命感を持ち、抜き打ち的な監査も必要に応じて積極的に行うべきだと提言している。

また報告書では、安全活動の基本的枠組みとして、@事前のリスク認知と評価A事前の安全確保B事後の安全確保−事故発生に際しての情報ネットワーク、事故対応組織とその指揮命令系統の予めのプログラム化などC安全支援−の四つの活動を挙げ、この枠組みに基づいて安全活動を組織において展開していく方法を提案している。


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