[原子力産業新聞] 2000年4月27日 第2035号 <3面> |
[世界エネ会議] 原子力の重要性を強調政治的な電源選択に警告世界エネルギー会議(WEC)は11日、「200年声明−世界の明日のエネルギーに向けた行動」(ETW)と題する報告書を発表し、世界レベルで持続的な利用が可能なエネルギー開発における原子力の根本的な重要性を強調するとともに、すべてのエネルギー・オプションを堅持するよう各国政府に促した。 WECは100ヶ国以上の国で構成される非政府組織で、世界的な規模で継続して供給・利用できるエネルギーの推進を目的としている。93年にETWを出して以来、世界人口や各国政治経済、電力部門の構造など、さまざまな分野で状況が変化したことから、2000年版のETWでは過去7年間の新たな情報に基づき、2020年に照準を当てたエネルギー開発について各国の政策担当者や事業体の戦略決定者のみならず一般市民に対しても実行性のある現実的な行動指針を提供することがねらいだ。 ETWの基本的な主旨は「世界のすべての人々が近代的なエネルギー源を利用できるようにならない限り、良好な健康状態や食料、水資源、教育などといった基礎的な福利厚生は改善され得ない」というもの。特に発展途上国の、未だにエネルギー利用から取り残された20億の人々が平均的な水準の生活を確保できるよう、エネルギーを含めた最低限のサービスを供給することを勧告している。しかしながらETWは、世界が持続可能なエネルギー開発にむけた政策や対策に素早くシフトできたとしても2020年までの短い期間でエネルギー傾向に劇的な変化を期待することはできないとも認識しており、各国政府に対しては少しでも見く対策に取りかかるよう呼びかけている。 具体的な行動としてETWは、「極めて単純ではあるが、どんなエネルギー源も気まぐれな政治的判断で排除されることがあってはならない」と指摘。すべてのエネルギー・オプションを堅持する必要性を強調した。原子力に関しては「大規模な燃料源を有する(また、増殖炉を利用すれば潜在的に無尽蔵とも言える)唯一のエネルギー供給法であり、WECメンバー国にとっては非常に重要だ」と指摘している。温室効果ガスを出さない点にも注目しており、「気候変動が現実的な脅威となった時、原子力はベース・ロード電源として石炭に代わり得るただ一つの既存発電技術と言える」と評価。PA上の問題に直面しているとはいえ、現在の安全性や放射性廃棄物処分、規制体制を改革することでこの種の不安が払拭されていくとの認識を示した。 ETWはまた、分かりきった当然の結論として「天然ガスや環境汚染度の少ない化石燃料の役割がどれほど強化されようと、2020年までの間は世界が従来の化石燃料発電と大規模な水力発電に強く依存し続けることは明白」と断言。しかし、これらのエネルギー源で今後新たにエネルギー利用を始める20億人の需要を完全に賄っていくことはできないとし、その意味で将来に規模を拡大する可能性も視野に入れて原子力の役割を確固たるものにしておくことが必要なのだと指摘した。 ETWはさらに、今後力を入れるべき分野として新たな再生可能エネルギーの開発と燃料電池の導入を挙げた。ただし、現在から2020年までの間のエネルギー利用目標を満たしていく上で、一層効果的かつ持続的に利用可能な化石燃料や大規模水力、原子力の重要な役割への魅力が薄れる程度にまでこれらの新エネルギーを開発することはできないと考えていることも明示している。
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