[原子力産業新聞] 2000年4月27日 第2035号 <4面> |
[書評] 「ポリマーの放射線加工」−幕内恵三著ポリマーの放射線加工は、放射線でポリマーをつくったり、既存のポリマーの性質を変えたりする手法である。プロセスとしては放射線重合、放射線橋かけ、放射線分解、放射線キュアリング、放射線グラフト重合がある。わが国における放射線加工の実用化は1961年の放射線橋かけによる耐熱電線の製造に始まり、その後も発砲プラスチック、熱収縮チューブ、ラジアルタイヤ等の製造に重要な役割をはたしてきた。 著者は、原研高崎研で30年以上にわたってポリマーの放射線加工に関する研究開発に従事し、東南アジア諸国への技術協力や国内企業との共同開発、技術移転等に携わってきた。その経験を踏まえ、放射線加工をこれから検討しようとする高分子技術者を対象に、ポリマーの放射線による合成から改質までの放射線加工を易しく、具体的に解説したのが本書。本書のねらいは、放射線加工の普及促進であり、放射線加工の特長はなにか、どういう応用の可能性があるかなどを分かりやすく解説している。また放射線加工がどこまで利用されているかについては、経済規模に関する最新の調査結果が紹介されている。 本書は、ポリマーダイジェスト誌に1998年12月から13回連載した解説記事を1冊にまとめたもので、構成は「放射線加工概論」「放射線橋かけ」「放射線グラフト重合」「放射線キュアリング」「放射線分解と放射線重合」「ポリマー製品の放射線滅菌と耐放射線材料」「再利用と環境保全」−など。 ハイドロゲルやラテックス、多糖類の放射線分解、ポリマーのリサイクルヘの放射線加工の応用など新しい放射線プロセスが紹介されているのも特徴だ。さらに、それぞれの放射線加工プロセスの競合技術との比較から放射線加工の特徴が浮き彫りにされている。また、巻末の資料はバイヤーズガイドとしても有益である。 A5版、288頁。定価3,800(税別)。ラバーダイジェスト社(電話03-3265-4840)まで。
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