[原子力産業新聞] 2000年5月11日 第2037号 <3面>

[米国] クリントン大統領、廃棄物法案に拒否権

会期中に再審議の可能性も

米国のクリントン大統領は4月25日、原子力発電所からの使用済み燃料をネバダ州ユッカマウンテンに貯蔵処分するための放射性廃棄物政策修正法案に対して拒否権を発動した。

拒否声明の中で大統領は同法案を支持した議員達を「無分別」と評価。同法案は長期的な高レベル廃棄物地層処分場としての適性を調べる最良の科学研究調査を何一つ支援しておらず、2001年に同サイトを処分場として勧告すべきかの判断を下す際にも国民を十分納得させるものとは言いがたいと断言した。

大統領はまた、この法案はこれらの両方の点で事態を後退させており、環境保護庁が周辺住民の健康や環境を守るための放射線基準を策定する上での制約となり、同庁が2001年6月までに最終的な基準を発表するのを阻むことになるだろうと指摘した。

大統領はさらに、原子力規制委員会など審査手続きに関わる機関として同法案が提案する団体は「官僚主義的な二重手間で不必要な作業を増加させる」と主張しており、特に、発電所サイト内の使用済み燃料を引き取るという電力会社との契約義務を果たす上で実行司能かつ短期的な解決方法を提供する権威当局が法案中に含まれていないことは問題だと訴えている。

これに対して米原子力エネルギー協会(NEI)のJ.コルビン理事長は、「議会・上下両院の大多数が超党派の協力で練り上げた法案を拒否するとは、国民の利益に供する、必然的に導かれたエネルギー政策の採用に失敗したようなもの」と非難。温室効果ガスを出さない原子力が米国社会、環境および経済に与える恩恵を最大限に利用する素晴らしいチャンスを逃したことになるとの認識を示した。

なお、同法案は5月2日に上院本会議で大統領の拒否権を覆すか否かの票決が行われた。最終的に共和党のT.ロット院内総務が「賛成」から「反対」に転じたため、拒否権を覆すのに必要な66票に2票届かなかったものの、今会期の後半にも再び審議される可能性が出てきている。


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