[原子力産業新聞] 2000年5月18日 第2038号 <2面>

[放射線防護] 広島市で第10回国際会議

IPRAら主催、「生態系との調和」目指し議論

放射線防護に係わる課題等について話し合う「第10回国際放射線防護学会(IRPA)・国際会議」が15日から19日までの日程で、広島市の広島国際会議場で開幕した。4年にい1回開かれている同国際会議が東アジア地域で開催されたのは初めて。「放射線と人間、生態系の調和」をテーマとした今会議には58か国・地域から1,000名を超える専門家が集い、放射線の健康影響や医療被曝の放射線防護など10の幅広い分野について最新の研究成果や東海臨界事故などトピックスについて発表・議論した。

開会の冒頭、挨拶した草間朋子大会組織委員会委員長(大分県立看護科学大学長)は、JCO事故以降、原子力エネルギーと放射線防護のあり方について国民の懸念が広まっているとしながらも、原子力エネルギー利用は今後とも重要な役割を果たし、放射線防護についても重要であり続けるだろうとの考えを示した。また原爆生存者の方のデータや放射線影響研究所がこの地にあり、記念碑的な位置を占めている国際的都市である広島市で会議が開催されることは意義深いと述べ、5日間にわたる議論に期待した。

続いて、来賓として列席した秋篠宮さまが祝辞を英語で述べられた。秋篠宮さまは、科学技術の発達は人類の福利の発展に役立っているとし、とくに放射線利用は幅広く多くの国で利用されているとの現状を述べられるとともに、こうした利用は平和的に環境との調和のもとに使っていかなければならないとの見方を示された。さらに広島は放射線影響に関する研究の認識を高めた所でもあり、同地で開催されることは意義深いとされ、今会議が放射線利用が人と環境の調和に大いに役立つものと期待すると述べられた。

この後、IRPAが放射線防護の研究に寄与した者に授与している「シーベルト賞」が、日本人として初めて重松逸造前放影研理事長に送られた。重松氏はシーベルト賞授与後、広島・長崎の原爆投下から今日までの被爆者調査について記念講演した。

一方、会議の前日には同会場でIRPA組織委と放射線被曝者医療国際協力推進協議会(HICARE)が主催して「生活と放射線」をテーマとした市民セミナーが行われた。


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