[原子力産業新聞] 2000年5月18日 第2038号 <2面>

[インタビュー] 今村原子力安全局長に聞く

実績積み上げ信頼回復

「臨界事故のような重大な事故の再発防止に努め、安全に対する実績を積み上げていく以外に国民の信頼回復を図る道はない」−。4月に科学技術庁原子力安全局長に就任した今村努氏は本紙インタビューでこう決意を語る。

−まず、何から取り組んでいく考えか。

今村局長
局長に就任するに際して、大臣から2点の指示を受けた。その一つは臨界事故のような重大事故の再発防止のための対策を講じること、二つ目はとくに地元へのきめ細かな対応を行うようにということだった。地元とは連携を図りつつ、 JCO 事故を教訓にして再発防止に取り組んでいきたい。事故後6か月間で関係者等の努力によって改定炉規制法や原子力災害対策特措法の二法が制定され、安全に対する対応の基本的な枠組みが作られた。その直後にバトンタッチとなったわけだが、その法律で決められたことを具体化していくことが自分の役割だと思っている。防災対策、保安検査などこれから実際にスタートさせていかなければならない。"(法的枠組みという) 仏に魂を入れる"というつもりで取り組んでいきたい。

−これからの安全行政に望まれることは何か。

今村局長
一言でいうと安全行政に対する国民の信頼回復が最大の課題だ。信頼の回復は実績に基づいて培われるものであり、やはり事故が起こらないようにすること、万一起こった場合には重大な事態に至らないようにする等、実績を積み重ねる以外には信頼回復の道はない。

−原子力防災対策への取組みについては。

今村局長
原子力災害対策特別措置法という枠組みができて、来月にも施行されることになっている。そればかりでなく災害対策基本法に基づく防災基本計画あるいは原子力安全委員会の防災指針見直しなども並行して進められている。そしてこれらを受けて、事故が起こったときに実際に使える地域防災計画ができることが大切だ。緊急時医療対策など地域によって状況等が違っているが、きめ細かく対応していかなければならない。地域で作られるものであるが、我々としても一緒に考えていきたい。

−原子力安全委の事務局が総理府に移管されたが、疎通に支障はないか。

今村局長
移管の経緯を考えれば、大切なのは「一線を画す」ということだ。その上でどういう関係を築くのがよいのか考えていきたい。私自身もできるだけ定例会等に出席したいと思っているし、情報等もきめ細かく報告していきたい。

−来年1月の中央省庁再編に向け、原子力安全局メンバーも安全委や経済産業省に移る者も出てくるが、こうしたことへの対応は。

今村局長
これからの一年は移行準備の期間にあたり、決められた枠組みの中でスムースにこうしたことを粛々と実施していくことが大事だろう。その間、いうまでもなく、安全規制に手落は許されないことであり、また事業者にも混乱がないようにしなけれぱいけないと考えている。 現在、安全局には138名のスタッフがいるが、うち60名程度が産業省に移ることになる。文部科学省における原子力の安全部門へは60名程度のスタッフが移ることになっている。

−局長就任までしぱらく文部省に籍を置いておられたが、その経験を踏まえ文部省との統合に期待することは。

今村局長
文部省の行政は、学術分野についても全体をかさ上げするという仕事をしている。科技庁の仕事は科学技術分野において国家戦略となるものを決めて、これを計画的に実施していくということが基本だろう。この二つが一緒になることによる大きなメリットとして、国家戦略として重点的、計画的に推進する機能と、それをベースで支える基礎・基盤の強化を図る機能がうまくかみ合えば良い仕事ができる。文部科学省は政府の研究投資の7割5分を占めることになるので、統合によって相互に補完し合い科学技術の発展が一層効果的・効率的になっていくことを期待している。


1969年京大工学部卒後、71年同工学研究科修士課程修了、科技庁入庁、91年原子力局原子力開発機関管理官、97年同審議官(原子力局担当)、99年文部省大臣官房審議官。53歳。


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