[NEI-insight] R.メザーブNRC新委員長に聞く
新たな監督手続を開始
物理学者で弁護士というユニークな経歴をもつ米国原子力規制委員会(NRC)のリチャード・メザーブ委員長は、NRCによる原子力施設の規制改善がすすむ最中にNRCのトップの座についた。すなわち昨年10月に委員長に就任し、2004年6月30日までの任期を務めることになったのだ。インサイト誌は1月4日、メリーランド州ロックビルにあるNRC本部で新委員長にインタビューした。以下は、その概要である。
−NRCは今春、原子力発電所の新しい監督手続を開始することになっていますが、昨年9か所の原子力発電所で試験的に行ったことを米国内の全部の原子力発電所で行うにあたっての課題は何ですか?
メザープ このプログラムをより広い範囲で行うことになれば、さらにどのように改良を加えれば良いかということが分かるとみています。経験を積むにしたがって課題がでてくると思います。我々としては新しいことをするわけですから、この監督手続を改良するための方法を学はなけれぱなりません。 もう一つの課題は、新しいことをするため、NRC事務局員を教育、訓練するということです。私としては、事務局員がこの任務を果たすことができると確信しています。変更の必要性、変更の重要性、そして変更の価値というものを認識している、きわめて強い意識を持った人たちがNRCにはいます。 すべての人が奮闘し努力をささげる時期にきています。NRCとしては、従来調べてきたものとは若干違ったものを調べることになリます。原子力発電所の運転者は、NRCが作りあげようとしているこれまでは違った規制環境に対応しなければならないことになるでしょう。
−原子力発電所の規制をもっと安全に焦点を定めたものにしようとしているわけですが、これについての見通しは?
メザープ これはNRCにとってもきわめて重要な第一歩です。この手続によって、何を維持あるいは強化しなければならないのかを判断するため、またリスクを最小に抑えるという点から緩和してもかまわないものは何かということも判断するための、NRCの規制用件が分析できることになります。 こうした規制要件が定められた当時と比べると、NRCには現在、原子炉に関する膨大な経験があります。つまり、NRCとしては、システムのどのコンポーネントがリスクに対して最も大きな意味を持っているかということを分析するための手段を持っているということです。我々としては、そうした知見のすべてを規制システムに活かす機会がこれまでありませんでした。今回、監督手続きを変更したのも、その機会が到来したからです。
−こうした変更をさらに続ける考えですか?
メザーブ NRCの役目は、始まったばかりのプロセスを維持するとともに、事務局員が政策課題に取り組むにあたって、これを支援することだと思います。 またNRCとしては、こうした任務を遂行するため、事務局の人員や予算にも配慮しなければなりません。仕事のやり方を変えるには、効果的で十分に練られたシステムを作り上げていくため、事務局としても相当の努力が必要になります。
−NRC委員長にまだ就任したばかりですが、2004年の任期末までにNRCをどうもっていきたいと考えていますか?
メザーブ リスク情報に基づいて原子炉の規制や検査を行うという方法が大きく進展するとみています。 我々は首尾よくそうした努力に着手したばかりですが、注意を怠らず作業を継続していくことになるでしょう。もちろん、生易しいことではないと思いますし、短期間にそれを実施することも不可能でしょう。 2番目は、核物質を扱う施設の規制を改善するための作業に着手することです。私としては最終的に、米国内で次世代の原子炉が建設されるための基礎をつくり、そうした事態になった場合に、それにこたえられるような規制体制にしていきたいと考えています。
−原子力の将来についてはどう考えていますか?
メザーブ 我々は今、変化の時期にたっていると思います。1、2年前は考えてもいなかったように、不意に原子力発電所の経済性が云々されるようになりました。私は、こうした経済的な状況は変わっていくと思います。温室効果ガスの排出やこれにともなう地球温暖化についての懸念が高まっていることもあり、また化石燃料に関係した環境問題がクローズアップされるに及んで、原子力オプションを維持することはきわめて重要だと思います。原子力技術の持つ環境面での利点は、将来的には理解されることになると考えています。また、経済状況の変化とともに、たとえば化石燃料の高騰もそうですが、経済的な理由からも原子力技術の再考を必要としているのだということになることも考えられます。 私としては、米国が将来、エネルギー源として原子力技術をさらに拡大することができると期待しています。
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