[原子力産業新聞] 2000年5月25日 第2039号 <3面>

[ユーラトム] ウランの在庫減少で警告

「短期的にも不足の恐れ」

欧州原子力共同体(ユーラトム)の供給局は今月始め、昨年1年間の世界の核燃料供給状況に関する年次報告書を発表し、「天然ウランは在庫量が減少傾向を辿っており、短・中期的にも不足する恐れがある」と警告した。

報告書はまず、99年は世界で天然ウラン生産量が3万1,000メトリックトン(tU)だったのに対し、消費量は6万tUであった事実に言及。不足分の多くは電力会社や生産業者らの在庫の切り崩しとリサイクルで補われたと指摘した。この傾向はここ数年続いていることから、同報告書は「過去の生産過剰分が必要となってきたことは疑いようもない」と評価。供給局としては、この在庫を短期間でどの程度使ってしまうことになるか、また、世界の供給量の約半分が「2次供給源」からのものだという点に危慎を覚えると訴えた。

また、このような傾向は、電力会社が運転コスト引下げのために自身の在庫を削減する圧力にさらされていたり、生産業者の数が統合、もしくは廃業により減少している時に一層顕著だと指摘したほか、コスト削減を狙った業者の統合は供給源の多様化という点でリスクが生じるとの見解を示した。世界の市場価格も経済的な効果や市場の規制緩和、および2次供給源の枯渇時期の不明確さなどにより、今後も下がり続けるとの予想を明らかにしている。

この場合ユーラトムは、天然ウラン供給材と分離作業量(SW)の「2次供給源」は大部分がロシアの核兵器解体から出る高濃縮ウラン(HEU)であるとしているが、市場に流れるのはごく限られた量。このため、市場の契約条件が改善されなければこの状況に変化が生じることはなく、しかもこれらのほとんどは米国に売られて行くことが予想されると指摘した。

また、これ以外にユーラトムは民営化された米ウラン濃縮会社(USEC)による在庫販売を「2次供給源」と称しているが、同報告書はこれについては特に「EU諸国の役には立たない」と強調。当初3万tUと見込まれていた在庫量が年末には3分の1以下に減っており、しかもその大部分が米国で売却された事実に言及している。

EU域内における天然ウランの所要量は主に長期契約によって手当てされており、スポット契約の割台は8%程度。ロシアを始めとするNIS諸国が最大の供給源となっており、EU諸国によるNISからの99年の購入量は5,100tUで契約購入総量の35%を占めた。年間を通じてEU域内の原子炉に装荷された新燃料は合計2,900tUで、これらは天然ウラン1万9,400tUと分離作業量1万800tSWに相当するとしている。廃棄濃度は0.25%〜0.35%の範囲内となっている。報告書は今後10年間にEU域内の平均的な出力の原子炉で必要になる天然ウランの総量は年間2万1,400tU、濃縮の所要量は年間1万2,200tSWと見積っている。


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