[原子力産業新聞] 2000年6月1日 第2040号 <1面> |
[JCO事故] 損害調査報告書まとめ保険金支払の指針科学技術庁が昨年10月に設置した「原子力損害調査研究会」(会長・山下俊次科技庁参与)は5月26日、「JCO東海事業所核燃料加工施設臨界事故に係わる原子力損害調査研究報告書」を取りまとめ、同日の原子力委員会に報告した。これはJCO事故による各損害項目について「相当の因果関係の範囲」と「損害認定に関する基本的な考え方」を整理したもので、保険金支払いの一つの指針や訴訟などの場合の判断材料となるようまとめたもの。調査の対象とした損害項目は@身体の傷害A検査費用(人)B避難費用C検査費用(物)D財物汚損害E休業損害F営業損害G精神的損害−の原子力損害賠償法の対象と認められた範囲について。 ただし、これを超える請求であっても因果関係が立証されれば、その賠償を否定するものではないとしている。 JCO事故は原賠法が1961年に制定されて以来はじめての適用ケースとなり、民法の特別法である原賠法の解釈について、放射線の作用との間に相当因果関係が認められるか否かが最大の論点となった。科技庁ではこうした当事者間の話し合いを迅速かつ円滑に進めるために、弁護士や学識経験者等から成る同研究会を発足させ、諸外国の実例・過去の裁判例、事故現場周辺の実地調査などを踏まえてまとめた。 まず「身体の傷害」では、指針として、請求者の身体における傷害が、請求側の立証により、放射線又は放射性核種による放射線傷害であると認められた場合には、賠償の対象と認められるとしている。従ってJCO作業員3名は賠償の対象であり、それ以外の周辺住民等は原子力安全委検討では放射線影響が確定的影響が発生するレベルでないとしており、JCO事故により放射線傷害が立証されない限り賠償の対象とはならないとしている。 「検査費用(人)」では、事故発生から避難要請の解除までの間いずれかの時点で、県内に居たものが身体の傷害の有無を確認する目的で、昨年11月末までに受けた検査について検査費用を支出した場合には請求者の損害と認められるとしている。「避難費用」については、現実に支払った交通費、行政措置の会場までに支出した宿泊費や附随して支出した費用は、対象となると認めている。 さらに「休業損害」では屋内退避勧告がなされた区域等で行政措置による就労が不能となった場合には、その状態が改称された時点までに生じた給与等の減収が請求者の損害と認められる。「精神的損害」については、身体傷害を伴わない精神的苦痛のみを理由とする請求については特段の事情がない限り損害とは認められないと判断している。 一方、今回の損害請求全体の約7割を占める「営業損害」については、すでに昨年12月に中間的確認事項を公表しているが、今回でも取引拒絶など様々な行為により現実に減収のあった取引について、昨年11月末までの期間に生じた減収分について損害を認めている。
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