[原子力産業新聞] 2000年6月1日 第2040号 <2面>

[自民党小委] 総合エネ政策で17提言

着実な原発推進求める

 自民党のエネルギー総合政策小委員会(甘利明委員長)は5月24日、「エネルギー政策は長期・総合的な視点に立ち、科学的かつ柔軟な発想で取り組むこと」「原子力発電は化石燃料依存度の低減などの観点から安全管理に万全を期しつつ、着実に推進する」など17の提言を行った「第1回中間報告書」をとりまとめ発表した。同小委員会は、最近のエネルギーを取り巻く環境変化から「エネルギーに関する中長期的な総合政策を討議することが必要」との認識に至った同党が3月31日に設置したもので、発足後は学識経験者などからのヒアリングも含めて計7回にわたる討議を行ってきた。

 報告書は、提言の総論として@エネルギー政策は長期・総合的な視点に立ち、科学的かつ柔軟な発想で取り組むことAエネルギー政策の目標は「エネルギー安全保障」「環境適合性」を基本とすべきB施策実現のためには「生活者」「企業」「行政」のパートナーシップが有効−を明示。また各論では需要面について、「今や需要はどうなるかではなく、需要をどうするかの時代を迎えている」と指摘し、「使い捨てからリサイクルへとライフスタイルを変革すべき」と訴えている。

 一方、供給面については「強靭化」と「クリーン化」が課題として、エネルギー自給率と一次エネルギーの中東依存率の改善および、エネルギー起源のCO2の長期的削減を挙げている。原子力発電について報告書は、「化石燃料依存度の低減、エネルギー安全保障の観点から安全管理に万全を期しつつ、着実に推進する」と提言した。またJCO事故については「特殊な燃料を違法に加工した工場で生じた臨界事故」であるが、これを例外とせずに安全審査指針の見直し・強化、安全管理体制の改善、原子力防災体制の強化などを行い、原子燃料サイクルの一貫した安全管理および防災対策強化を図るとともに、立地地域の振興にも配慮すべきと提言している。

 また高速増殖炉(FBR)については「商業科が急務でなくなった」と明示したが、これを「十分な研究会開発の時間が得られたこととなる」「長期的には世界が必要とるす可能性のあるFBR技術を、日本がトップランナーとして研究開発することを可能にした」と捉え、「長期的な研究開発の課題」と位置づけている。現在停止中の「もんじゅ」については「安全審査をスタートし、一定期間運転後、データの蓄積と解析により、将来の炉型戦略を考えることを検討すべき」と一つの方針を示している。原子燃料サイクル関連では「国際的なウラン需給の動向、サイクル関連技術開発と、コストの国際比較などを勘案し、柔軟に対処することも検討する」と提言するにとどまった。

 なお新エネルギーについて同報告書は、「非化石・非枯渇性・地域分散・需給直結といった魅力があり、今後も推進すべき」としながらも、エネルギー密度の薄さ、変動の多さ、コスト高、量的にも望めないなど数多くの固有の弱点があることから「『人気先行』『社会的期待過剰』との指摘もある」として、「今後、在来エネルギーの『補完的役割』として育成」する方針を示し、その間のインキュベーター(保育器)機能として建設補助金など助成を行い、成長した段階では補助金を廃止し、市場原理に委ねるとの提言を行っている。

 また同報告書は今後の検討課題として@異なる政策目標間の調整メカニズムをどのように考えるか(「環境緩和・自由化」と「環境保全・エネルギーセキュリティ」など)Aエネルギー諸税の見直しなど経済措置をどう考えるかB新エネルギーを補完エネルギーとして推進強化する具体策Cエネルギー政策の決定システム−を挙げており、これらについては引続き検討していくとしている。同小委員会は今後も審議を重ね、来年3月には最終報告書を取りまとめるものと見られている。


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