[原子力産業新聞] 2000年6月8日 第2041号 <1面> |
[参院本会議] 高レベル処分法案が成立今秋、実施主体設立へ長年の懸案だった高レベル放射性廃棄物処分の枠組みを定める「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」案が5月31日、参院本会議で可決、成立した。同法は原子力発電所の運転から生じた使用済み燃料を再処理した際に出てくる高レベル(特定)放射性廃棄物の最終処分に関して、国の基本方針、処分地の選定、実施主体などを規定するもので、約1年以内に施行される見込み。また電力業界は今後、今秋にも同法の成立を受けて処分の実施主休である「原子力発電環境整備機構」を設立する。 同法の内容を具体的に見ると、最終処分に関する基本方針および全体計画は、通産大臣があらかじめ原子力委員会の意見を聴取した上で定めて公表することとし、全体計画については10年を「一期」とするとしている。また処分の実施計画は、電力などが設立し、建設地の選定、施設の建設、実際の処分、拠出金の徴収などを行う「原子力発電環境整備機構」が作成し、通産大臣の承認を受けるものとされている。 一方、処分地の選定は、同機構が@あらかじめ文献調査などを行い、将来にわたって地震など自然現象による地層の著しい変動が起こる可能性の少ないと考えられる地域を選びAその中からボーリング調査などを行う「概要調査地区」を定めB概要調査地区の中から、当該地層やその周辺の地層内を物理的・科学的に調査する「精密調査地区」を選定する−といった手順で絞り込みを行い、実際に処分を行う「最終処分施設建設地」を決定する事とした。なお通産大臣が概要調査地区などの所在地を定めようとする際には、当該の都道府県知事および市町村長から聴取した意見を「十分に尊重すること」と定めている。 処分費用については原子力発電所を持つ電力が、廃棄物発生量に応じて機構に納付。機構は通産大臣が指定する指定法人に積み立てるとしている。 衆参両委付帯決議、自治体との円滑な意思疎通を特定放射性廃棄物処分法案の成立に関して、衆院・商工委員会と参院・経済・産業委員会は概要調査地区等の関係地方公共団体の理解と協力が必要不可欠となることから、的確かつ事前の情報提供や原子力発電環境整備機構との円滑な意思疎通を図るよう求める付帯決議を行った。両委員会の付帯決議は、その他、@原子力広報の抜本的強化A原子力安全委の関与を十分なものとし安全確保に万全を期するB概要調査地区等の選定に当たっては、社会的条件への配慮、選定過程の透明性・公正性の確保に十全の努力を払うC指定法人の指定にあたっては適格な経理的・組織的能力を有する法人にするとともに、天下り機関等との指摘を受けないよう厳正に対処すること−などを要望している。 太田電事連会長、立地活動に向け諸準備に努力特定放射性廃棄物処分法が成立したことについて太田宏次電事連会長は同日、次のようなコメントを発表した。高レベル放射性廃棄物の処分制度の確立は、原子力発電・原子燃料サイクルを推進するわが国において、避けては通れない喫緊かつ重要な課題である。また処分事業は、非常に長期にわたる事業となるため、計画的かつ確実に実施する必要がある。したがって、このたび最終処分事業の実施に必要な枠組みを制度化する法律が成立したことは、わが国のエネルギー政策上、誠に意義深いことと考える。 私ども電気事業者としては、使用済み燃料の発生者という立場も踏まえ、今後、処分事業の実施主体(原子力発電環境整備機構)設立に向けて積極的に役割を果たし、立地活動に向けた諸準備が早急に開始できるよう努力していきたい。また、本事業推進の意義、必要性等について国民の皆さまのご理解をいただき、立地活動が円滑に進むよう、実施主体と共に取り組んでいく所存である。 また竹内哲夫日本原燃社長も、「原子燃料サイクルの確立を目指すわが国にとって、高レベル放射性廃棄物の処分制度の確立は極めて重要な課題であり、着実に進めていく必要のあるものだ。今後とも実施主体の設立など、高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取り組みが着実に進展することを期待している」とのコメントを発表した。
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