[原子力産業新聞] 2000年6月8日 第2041号 <3面> |
[フィンランド] 産業界、電力需要を予測今後15年間、新規設備400万kW必要フィンランドのエネルギー産業連合会(FINERGY)は5月24日、今後15年間でフィンランドの電力需要が急増し、新たに400万kW近い発電設備が必要になるとの見解を明らかにした。 これは「2015年の電力市場」というタイトルでFINERGYがまとめた報告書の結論。同報告書の指摘によると、近年の欧州電力市場を特徴付けている供給過剰は過渡的な現象であり、市場の自由化は今後、非経済的な発電設備の閉鎖や発電構造の適正化を加速していくとしており、一旦、自由化が完了すれば、京都議定書に示されたCO2排出削減目標の達成が次の大きな課題になるとの認識を示している。 報告書作成のきっかけとなったのは、今年2月頃に再燃した同国で5基目の原子力発電所建設の是非をめぐる政治論争。FINERGYは報告書の中でこの点に関する具体的な立場は表わしていないが、原子力の将来の役割と京部議定書における同国の目標値達成能力との関わりについては次のような認識を表明している。 ▽今後10年間にフィンランドの総電力消費量は年率1.5%、それ以降は年に1%の割合で増加していき、2015年までの総計増加量は25%に達する見込み。この予想では省エネ分野での改善を考慮するとともに、この期間の経済成長率を年平均3%以下に想定している。 ▽総消費量の具体的な数字は99年の780億kWhが2010年に920億kWh、2015年には910億kWhに増加すると予想されるが、増加量の6割を産業利用が占めている。需要増加分を賄うためには、今後新たに380万kWの設備容量が必要になる。 ▽これに伴い、ピーク時の需要も現在(99年1月)の1,308万kW、が2010年には1,610万kW、2015年には1,690万kWに増えていくと見られるが、何らかのアクシデントで発電や送電、燃料供給などが途切れた場合の予備容量も確保する必要がある。 ▽北欧地域全体の予想でも電力消費は99年の3,770億kWhから2015年には4,210億kWhに到達するが、これは追加で700万kW〜800万kWの設備容量が必要なことを意味している。 ▽これらの見積もりに基づいて現在、4種類のエネルギー・ミックス案が考えられており、このうちの2案で1基、もしくは2基の新規原子力発電所建設が盛り込まれている。しかし、残りの2案では天然ガス火力発電所の増設、あるいは既存発電施設の寿命延長と輸入拡大で需要増に対処するとされている。 ▽4案ともに2010年までのCO2排出量は現在の年間1,200トンから増えていくことを見込んでいるが、原子力の増設を盛り込んだ2案ではCO2増加量が最も低い。一方、その他の2案では年間で2,000万トンの増加、出水率の悪い年ではさらに500万〜2,500万トン増加すると想定されている。 ▽北欧地域における水力発電への高い依存度は、原子力がべース・ロード電源を非常に低い価格で供給し、ビジネス・リスクの軽減に役立っていることを物語っている。この地域の水力発電では、年間出水率の高低による同地域全体の発電電力量の差は740億kWhにものぼり、これはフィンランド一国の年間総電力需要量に匹敵する。 ▽電力の輸入拡大は実行可能なオプションとは言いがたい。輸入電力の割合はすでに総消費量の15%近くに達しており、これ以上輸入への依存を深めることはエネルギー産業界として勧められない。
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