[原子力産業新聞] 2000年6月8日 第2041号 <5面>

[三菱重工] 新型電子線照射システムを開発

世界初、10MeVの加速管

 三菱重工業はこのほど、大型機の4分の1の長さの電子加速管で大型機並みの10メガ電子ボルトの加速エネルギーを持つ「電子線照射システム」を世界で初めて開発した。小型化の実現により、大幅なコスト削減が可能となったほか、滅菌装置への適用に加えて、医療用治療機器分野へも加速管単体での販売を行っていくとしている。

 電子加速管は、電子銃から発射される電子ビームを加速させ、光とほぼ同じ速度まで高める装置。電子ビームのエネルギーが高くなるほど透過力が強くなる。複数の共振空洞にマイクロ波を使って電場を作り、これに電子を投入して順次加速する仕組み。加速に用いるマイクロ波の周波数を2倍に高くすると従来の2分の1長さの加速管で同じ加速エネルギーが得られることから、小型機では民生用として初めて5,712メガヘルツ(Cバンド)の周波数を実用化、従来の周波数を2倍にするとともに、マイクロ波による電場の発生方法に工夫を加え、長さ50cmで従来の4分の1、重さ25kg増で20分の1という小型・軽量化した電子加速管で、大型機と同じエネルギーを得ることに成功した。

 電子滅菌装置は、現行のガンマ線やガスを使った滅菌装置より環境にやさしくクリーンで安全な装置として世界的に認知されている。同社はこれまでに加速エネルギー10メガボルト、電子ビーム出力30kWの大型電子線照射システムを開発、国内では手術着等の、海外では注射器等の滅菌用として納入の実績があり、今回、同時開発された中型機と合わせ、大型から小型までのラインナップの完成により、国内外に向けて営業活動を強化していく。


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