[原子力産業新聞] 2000年6月15日 第2042号 <1面>

[長期計画] 第4分科会、報告書を取りまとめ

「独創性・能力重視を」

 原子力委員会の長期計画策定会議・第4分科会(座長・秋山守氏、永宮正治氏)は5月31日、報告書「未来を拓く先端的研究開発」を取りまとめ、長計策定会議会合に提出した。

 報告書はまず、「原子力」は人類の知的活動の中で発見され、精神的豊かさを与える「文化」であると位置づけるとともに、先端科学技術を生み出す基盤を構築する「総合的な科学技術」として今後とも推進していく必要があると強調している。

 また、わが国の科学技術は、これまでの「キャッチアップ」型から、国際競争力のある国へ脱皮を図り、先端的研究開発による「未踏領域への挑戦」と「持続可能な発展」を主軸に据え挑戦すべきとし、中でも世界的に高い水準にある日本の原子力科学技術は世界のフロントランナーとして開発に取り組み、その推進に際しては、まず国民の理解を得て次世代を引き継ぐ人材も確保していくことが必要だと指摘している。

 研究開発の目指すべき方向と進め方については、他分野への波及が期待される「シーズ(種)の提供」と社会への実用化を見据えた「新しいニーズの開拓」の両方をバランス良く進めていき、社会への適時的確な情報発信、独創性の視点、萌芽的研究、大型プロジェクトヘの研究資源の集中投資などの重要性を述べている。

 先端的研究開発では、独創性と推進研究者の能力、意図等を優先的に重視しつつ、国際競争、発展性、文化・学術的貢献度等の観点からの定期的評価、計算科学技術ネットワーク化等を利用した「棲み分けから相互乗り入れ」による研究機関活性化、運営・責任能力を持った強力なリーダーとそれへの若手登用・育成、成果の民間への普及・促進が必要と指摘している。

 さらに「未踏領域への挑戦」では、放射光、荷電粒子、中性子、高出力レーザーなど学際・業際分野で利用が行われている加速器による研究開発について、さらに競争力ある施設整備等を国家・戦略的に進めていくこと、また科学技術の国民への還元という観点から加速器の小型・簡易化による一般への普及、効率・安全性の向上、地域への展開なども重要だとしている。

 一方、今後期待される具体的な革新的技術としては、ガスタービン採用、超臨界水冷却利用、標準モジュールの工場生産などを掲げ、それらの実現による中小型炉の可能性、また革新技術を組み会わせた高温ガス炉、高速炉を挙げ、国研を中心に産業界、大学等が協力して進めることを求めている。

 報告書の最後には「提言」を掲げ、重視すべき研究開発としてRIビーム加速器施設の早期実験開始やITERへの積極的取り組みなどのほか、革新的な原子炉の開発のため競争的アイデアを発掘できる方式を取り入れつつ、官学民が協力して検討を行っていくよう求めている。


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