[原子力産業新聞] 2000年6月15日 第2042号 <2面>

[原文振検討会] 原子力教育のあり方で報告書

情報提供など「支援機関」設置を提言

 日本原子力文化振興財団の「原子力に関する教育検討会」(委員長・天井勝海東京都立桐ケ丘高等学校長)はこのほど、原子力に関する教育のあり方についての調査報告書を取りまとめた。その中で原子力教育をサポートする支援機関の設置を提言した。

 今回の検討は原子力委員会の委託により、21世紀社会に向けたその理念、新しいカリキュラムに対応する教育のあり方や内容と方法、支援する方策等について検討を行ったもので、報告によると、エネルギー消費の増大と地球環境に及ぼす影響が顕在化し、その克服が人類共通の課題となっている現在、環境とエネを相互に関連付けた教育体系の確立が重要になってきているという背景を述べている。その上で、原子力に関する学習内容も日常生活上の問題から、地球的規模、遠い将来までの課題が広がっており極めて学際・総合的で、学校教育で扱うに当たっては、新指導要領で創設される「総合的な学習の時間」で、各教科の成果を生かし行われる意義は大きいと強調している。

 まず、現行の指導要領でも理科などで原子力を扱っているが、それら教科書について出版社らに対し、問題点だけでなく、エネ安定供給や放射線の国民生活での幅広い利用といった原子力の長所や、原子力発電の安全性や放射線の危険性についての客観的な記述を求めている。

 検討会で指摘された教育における課題としては、「原子力・放射線問題に関する体系的・総合的なカリキュラムが開発されていない」「マスコミのセンセーショナルな記事やニュースなどに基づいて行われる傾向があり、広い視点に立った科学的な情報を学校に提供していくことが必要である」などが挙がった。

 その上で、これからの原子力に関する教育のあり方としては、地球温暖化を避けるため炭酸ガスを出さぬ原子力エネに注目し、平和利用堅持もキチンと押さえた上で、原子炉の仕組みと安全性、放射線の人体影響、廃棄物の処理・処分等について十分な知識を与えることを訴え、また社会発展基盤、国民生活、地球環境問題、リスクと安全確保・文化との接点からも取り扱う必要を論じている。

 そのような状況から検討会では、教員が必要とする時にいつでも正確で適切な教材が提供でき、さらに教育情報の収集と提供など、広範に原子力教育をサポートする「支援機関」設置を提案した。また、その次善措置として現在支援活動を行っている同財団、電力会社などの機関のネットワーク化、役割分担の明確化を進め、支援体制の確立を図ることを訴え、併せて生涯学習の視点に立った教育支援や学習環境整備に向けて、「原子力の理解増進情報データベース」開発、その一般からのインターネット利用を進めることも強調している。


Copyright (C) 記事の無断転用を禁じます。
Copyright (C) 2000 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM,INC. All rights Reserved.