[原子力産業新聞] 2000年6月15日 第2042号 <2面> |
[政府] 科技白書を了承技術者の倫理感高揚を99年度「科学技術の振興に関する年次報告」(科学技術白書)が9日、閣議で了承された。今回のテーマは「21世紀を迎えるに当たって」と題して、20世紀での人類と科学技術の発展を振り返るとともに、来世紀の社会と科学技術の新たな関係のあり方について述べている。 白書は、20世紀後半に人類の活動が飛躍的に発展し、@基礎科学の進歩Aモノの発達B情報通信の発達Cライフサイエンスの進歩−等の科学技術成果が寄与してきたが、一方で@地球環境の汚染A資源枯渇の危機Bネットワーク犯罪−等の新たな課題が生まれ、科学技術と社会との間に諸々の課題が顕在化してきたことから、来世紀には社会との関係構築にも配慮しながら、科学技術を振興する必要があると指摘。その上で、将来へ向け「知識基盤社会への対応」を掲げ、知識の創造と活用、社会への浸透の実現のため、科学技術者の倫理観や社会的責任意識、一般への説明責任の高揚、また国民の知識涵養の努力や政策決定への参画、情報提供の充実に取り組もうという姿勢だ。特に、「国民の手にある科学技術」を目指し、広く一般に最新の情報を提供していく仕組みの構築と、人材の育成を期待している。 また、科学技術と社会との間に生じてきた課題として「原子力」の分野では、われわれの生活に多くの利便と恩恵をもたらしてきたが、一方ではわが国と原子力の係わりが原爆投下に始まったことや、放射線影響に関する知識が十分浸透していないことなどから、批判的な見方や安全性に関する不安が国民には根強いと見ている。90年の世論調査では、オイルショックを経験したわが国国民が、原子力を重要なエネ源として認識しているという結果が窺え、安全性に対する信頼感も 醸成されつつあったものの、95年の「もんじゅ」事故などによりその信頼が大きく揺らぎはじめ、さらに昨年の臨界事故では死者、風評による経済的被害にも及んだことを振り返るなど、危機感を叫んでいる。その上で、原子力技術が受け入れられるためには、平和利用と安全確保が必須で、国の施策や大企業の事業などに対する不信は、そのまま安全性への不信につながることを強調し、透明性を高め技術者らの倫理観や社会的責任意識の高揚を図るべきと指摘。 また、原子力安全管理に加えて宇宙開発、鉄道保安等の分野でも最近事故が相次ぎ、わが国の「ものづくり能力」低下が懸念されるようになったことから、その強化に向けての基盤整備方策等の検討が政府内で進んでいることにも触れている。
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