[原子力産業新聞] 2000年6月15日 第2042号 <4面>

[三菱総研] エネ・環境・原子力、各国の理解促進活動を調査

米英はエネ教育プロジェクト化

 三菱総合研究所は5月16日、米・英・仏・独など「諸外国でのエネルギー・環境・原子力に係わる理解促進活動に関する調査」の結果を公表し、原子力委員会に報告した。多くの国で教員への正確な情報提供が重要課題となっており、またマスメディア広告の効率的な活用に力が入れられているといった実態が明らかになった。

 まず教育制度については、学齢、教科書採択などの相違はあるものの、各国とも大枠としては日本と顕著な違いはないと分析している。米、英てばエネ教育のプロジェクトがあり、産官学共同のもと、教材作成、イベント・教員研修会開催、表彰などに取り組んでおり、電気事業者だけでなく石油・ガス・水道など様々な業界が、原子力をエネ源の一選択肢として取り上げ、教育活動に参加している。電力は、インターネットを利用したホームページによる情報提供(米)、教育経験のあるPR職員の学校配備(独)、エネ教育キット(テキスト、ビデオ、カードゲーム等)の配付(仏)を行うなど積極的だという。教員向け原発研修・見学会(独・台湾)などの方策がとられている国もある。英では、科学技術教育の方針として「あらゆることは二つ以上の側面が存在し、両者を理解させた上で判断は子供に委ねる」があり、そういったコンセプトで、エネに関しても原子力、火力、自然エネ等のメリット・デメリット両者をバランスよく示している教科書が多い。また、資料を読ませ小グループ内に電力関係者、原子力批判派、自治体など役割を当て、原発建設を想定し話し合わせることや、原発推進・反対それぞれのポスターを作らせるといった指導も行われており、事実に基づく判断能力、その発表能力の養成などに力を入れている。独では、物理の中で原子力に係わる面を取り上げているほか、地球環境など社会問題との関連についても重視。仏では、関係省庁合同で「緊急事態における行動指針」「学校と大規模リスク」といった資料を作成し、子供たちが自然環境とリスクを理解し、技術発展のインパクト、それから生じる責任と安全の問題を認識していくことを目指している。しかし、独には原子力に批判的な教員が増える傾向のある州もあり、感情を除いて客観的に教育することをカリキュラムに明記するといった対策もとられている。

 一方、広報をみると、原発の新規立地予定のない欧米では、放射性廃棄物処分、輸送等が主な課題になっている現状から、地域を限定した資料配付などに重点が置かれている。また、小規模なトラブルでも積極的に情報を公開、防災訓練へ報道関係者も招くなど、原子力関係書とメディアの良好な関係作りも盛んだ。さらには、世論・アンケート調査など効果を意識した戦略的広報活動、従業員を中心としたクチコミ広報効果を期待するといった、組織内を優先した情報伝達、緊急時対応ガイドやヨード錠剤の住民配付などリスク・コミュニケーションを重視した各国機関の取り組みもある。


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