[原子力産業新聞] 2000年7月6日 第2045号 <面>

[NSネット] ピアレビュー、2施設「安全性に問題なし」

 ニュークリアセイフティーネットワーク(NSネット)は、「相互評価」(ピアレビュー)を昨年12月の発足以来2事業所について行い、その結果を5月12日および6月20日に発表した。

 ピアレビューは、同ネットの会員の専門家からなるレビューチームが会員の事業所を相互に訪問し、原子力安全に関する会員間の共通課題について相互評価を実施して課題の摘出、良好事例の水平展開などを行い、お互いに持っている知見を共有して原子力産業界全体の安全文化の向上をはかる制度。

 第1回目は4月18日〜21日に、茨城県東海村の三菱原子燃料に対して、東京電力、核燃料サイクル開発機構、原燃輸送、富士電機、北海道電力およびNSネット事務局から各1名ずつの計7名のチームで行った。

 レビューチームは結論として、「直ちに改善措置を施さなければならない重大事故に繋がるような項目は見いだせなかった」とするとともに、良好事例として@外部機関による指導を受け広範なマネージメント活動として位置づけられた「TMP活動」が全従業員参加で展開されており、安全性向上にも寄与しているA現場での安全確保のノウハウが冊子に集大成され、現場作業と技術の伝承に役立っている。また品質保証に関わる活動として、技術伝承・人材育成を目的にグループによる「Know Why活動(品質管理パラメータの設定根拠の理解促進)」が展開されているB臨界安全管理の必要な設備・機器が明確に区分され、かつ臨界管理の方法や内容が臨界防止の観点から十分に検討されている。またその結果は「作業標準書」に反映され、作業者はそれに基づき作業を実施している−を挙げている。

 一方、「安全関連規則類の体系的整備」、「社員が共有すべき企業理念で、安全確保がいかなる場合においても最優先であることを明確にすること」、「『作業標準書』で、安全上の急所が目立つような標記をすること」、「臨界事故の教訓を風化させることなく従業員に伝承させるよう、効果的な教育手法を工夫すること」などを、操業の安全性をさらに向上させるための提案として行った。

 また5月23日〜26日には、第2回として東海村の原子燃料工業・東海製造所を対象に、関西電力、石川島播磨重工業、電力中央研究所、北陸電力、三井造船およびNSネット事務局の7名のチームがレビューを実施。

 「直ちに改善措置を施さなければ重大事故に繋がるような項目は見出せなかった」との結果報告を行うとともに、良好事例として@経営層が臨界事故を真摯に教訓として捉えて積極的に安全総点検をリードするとともに、社長直属の安全管理室を設置し安全向上に取り組んでいるASD(スキル・ディベロップメント)教育により個人レベルでの技術力向上へのきめ細かな教育が行われ、ヒューマンエラー防止が図られている。作業者一人ひとりに対してスキルレベルが把握され、必要な教育・訓練が的確に行われているB各工程における設備・機器毎に核的制限値を逸脱する可能性のある事象を想定し、防止策との関連において臨界の可能性を詳細に評価するなど、施設全体としてより高次の臨界安全管理を目指した系統的アプローチが進められている−などを挙げた。

 一方、同チームは「安全管理室の内部安全監査活動を、将来に向けて定着させることを期待」、「核燃料取扱主任者は、作業手順書の制定・改定においても安全面からのチェックを行うことが望ましい」、「万全の火災対策がとられているが、万一の火災を想定し、消防署の消火活動をサポートできるよう、具体的対応方法を明記することが望ましい」などを、改善点として挙げている。


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