[原子力産業新聞] 2000年7月6日 第2045号 <3面> |
[英国政府] 海洋放出削減計画案を公表年内にも最終決定へ英国政府は6月21日、英原子燃料会社(BNFL)のセラフィールド原子力施設からアイリッシュ海への廃液放出など、同国の放射性物質の海洋放出を20年間で実質的に削減する計画の素案を発表するとともに、これまでの放出量を審査するよう関係機関に指示した。政府は今後、9月22日までの期間に同計画を関係者達に諮問し、得られたコメント等を斟酌して年末までには最終版を策定・公表する考えだ。 この計画は政府の環境・輸送・地域省(DETR)が、6月末にコペンハーゲンで予定されていたOSPAR協定締約国会議の開催に先立って公表したもので、「セラフィールド施設からのテクネチウム99放出量を年間10テラ・ベクレル(TBq)以下に抑える」などの項目が含まれている。OSPAR協定はオスロとパリの間にある北海など大西洋北東部の海洋環境保全を目的としており、98年7月、ポルトガルのシントラにおける会合で2020年までに同海域への放射性物質放出を削減する戦略を取ることで合意していた。英国はこの公約達成のため、OSPAR協定締約国の中では最も早く具体的な放射性物質放出量削減計画を作成した国となった。 国際社会では一般大衆の被曝限度は年間1ミリシーペルト(mSv)とされているが、英国の計画は2020年までに海洋放出により年間0.02mSv以上被曝する国民をゼロにすることが目標だ。英国の放出量は現在、国民が自然界からの放射線や医学療法によって平均的に被曝する線量の0.1%以下に相当すると考えられている。 目標達成のため、同計画では放射性物質を排出する六つの基本的な部門ごとに目標値を設定。削減量のかなりの部分を施設の廃止で達成するほか、残りは排出量抑制のために開発された新技術の導入で実現する考えだ。部門毎の目標値は次の通り。 ▽ウラン濃縮および燃料製造=主にマグノックス燃料の生産停止により、液体廃棄物を99%以上削減し、ベータ放出体で年間1TBq以下、アルファ放出体にして年間0.01TBqにする。 ▽原子力発電=発電炉の閉鎖計画で用いられた仮定によればベータ/ガンマ放出体の放出量を約60%削減し、年間2TBq以下にすることが可能と見込まれる。 ▽再処理=主にマグノックス炉からの使用済み燃料再処理の終了により、アルファ/ベータ放出体の総放出量を70%以上減らし、年間30TBq以下とする。 ▽研究=廃止プログラムの完了により、ベータ/ガンマ放出体の総量を約72%削減して年間1TBqに。アルファ放出体については年間0.01TBqとする。 ▽防衛=兵器生産に伴う廃液の放出を2010年までにゼロにする。 ▽その他=ごく少量の放射性廃液を出す産業部門は多岐にわたるため個別に基準は設けないが、実質的に削減可能な部分を従来通り厳しく規制していく。 このほか、セラフィールド施設からのテクネチウム99排出量は年間10TBqに抑えることが明示された。BNFLはすでに5月に、マグノックス炉の閉鎖計画を公表しているため、マグノックス炉からの使用済み燃料再処理は2012年頃に終了できると見込まれている。酸化物燃料再処理工場(THORP)についてはAGRおよび軽水炉の燃料再処理が専用で、マグノックス炉用再処理に比べ大幅に放出量が少ないため、同計画に関わらずに操業を続けることが可能だとしている。
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