[原子力産業新聞] 2000年7月20日 第2047号 <2面>

[ITER] 3極代表で会合実施

工学設計とりまとめで協議

 国際熱核融合実験炉(ITER)を共同実施している日本、欧州、ロシアの各極代表による会合(ITER会合)が6月29、30日の両日モスクワで開かれ、工学設計のとりまとめに関して協議が行われた。

 日本からはメンバー代表の小中元秀科学技術庁長官官房審議官らが出席したほか、ラオッティ元欧州委員会第12総局長、ベリホフ・クルチャトフ研究所長らEU、ロシアの代表、エマールITER所長が参加した。

 工学設計段階の運営面、多極から基金の状況などを取り扱う運営諮問委員会では、エマールITER所長がまとめた1999年の共通基金報告が了承され、2001年の共通基金予算を暫定的に2000年と同レベルとして今年末に見直すことが確認された。また今後、工学設計が終了した際の資産処理をどうするか話し合っていくことが申し合わされた。

 技術諮問委員会では、ITER所長のとりまとめた概要設計報告書を土台として最終設計報告書をとりまとめ、同諮問委員会で評価することとなった。

 来年7月に予定される工学設計の最終とりまとめに関してはコスト評価も盛り込まれる方向だが、技術諮問委員会とは別に、多極のホーム・チームと産業界を含むアドホック・グループが評価検討にあたる。

 ITER会合では、このほか、EUからの提案で、ITER計画に対する産業界の関心を喚起するための産業界会合を今年11月にカナダのトロントで開催する方向で準備することが確認された、またEUからITERの名称に関して、すでに定着している「ITER」の頭文字はそのままとするが、その頭文字の説明については将来的に再検討するべきとの主張があった。

 ITER会合に先立ち、第2回目の非公式政府間協議が6月28、29日の両日、モスクワで開かれ、ITER実施協定や、工学設計以降の共同技術活動の骨子などを検討した。

 協議の結果、実施協定には(1)プロジェクトの組織構成(2)ITER実施主体の設立、運営機構(3)コスト分担のスキーム(4)ITER実施主体の設立、運営機構(5)人員(6)調達(7)知的所有権(8)サイト支援(9)廃止措置のスキーム(10)第三国の参加・脱退−の項目を盛り込むことが申し合わされた。

 また工学設計以降、実際の実験炉建設を念頭にした共同技術活動として、政席間協議に正式提案される実験炉建設サイト固有の適合設計や、安全解析、コスト評価などの技術情報を収集、検討するためのスキームを設置する方向性が確認された。具体的にはITERに参画している多極や、一定の資格で参画する第三国が協力して実施する調整委員会を設置する方針だ。

 同協議ではEUの一員として参加しているカナダの民間団体であるITERカナダから、サイトの誘致提案を受取り、専門家の検討も踏まえ、興味深い結果が出ているとの報告もなされた。次回の非公式協議は10月5日、6日、イタリアのソレントで開催される。


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