[原子力産業新聞] 2000年7月20日 第2047号 <2面> |
[報告] 藤家委員長代理、ロシア、カザフを訪問各種セミナー等に出席も藤家洋一原子力委員長代理は、このほどロシアとカザフスタンを訪間した際に、E.アダモフ露原子力省大臣らとの会談、技術セミナー出席、両国の研究施設視察などを行い、所感を原子力委で報告した。 視察は5月10日から21日にかけて実施された藤家氏と会談したアダモフ大臣は、沖縄サミット後の大統領来日時の話題に原子力分野を含め、これを日・仏・露の高速炉を中心とした核燃料サイクルを目指す国同士の連携を深める契機としたいことや、重金属冷却高速炉の有望性などを表明した。 その他藤家氏は、ロシア内ではクルチャトフ研究所を、カザフスタンでは放射線医学・環境科学研究所、セミ医科・工科大学、国立原子力研究センターIGR施設などをそれぞれ訪れたが、施設訪問に合わせて開かれたワークショップは、現地の報道機関にも注目されたいう。 また藤家氏は、カザフスタンのアスタナで開かれた「原子力国際技術セミナー」で、「包括的な原子力技術の将来展望」と題して講演。原子力の文明論的な位置づけを軸に、エネルギー利用から総合科学技術としての展開、リサイクル文明構築という人類文明発展の大きな潮流の中での原子力の意義について語った。この中で、核燃料サイクルの確立と核拡散抵抗性の両立が21世紀の原子カに求められており、明確な技術の将来像の提示が不可欠なこと、また日本の原子力政策は来世紀にあるべき長期計画の改訂を行い、広く全世界に発信していくことなどを強調した。日本からは他に、広島・長崎の原爆投下による被害状況と被爆者のがん発症率等に関するデータ提示や、カザフスタンでの核実験の後発的影響の検討についての協力などが発表された。セミナーにはカザフスタンの他、日本、ロシア、米から150名余が参加した。 セミナーに先立って行われた米エネルギー省関係者との会談では、日本側がロシアの非核化支援のために、既に「BN-600」で協力している解体プルトニウム燃焼計画に関して、米提案のHTRでの燃焼計画などについては資金援助の厳しい状況と説明。さらにDOEはセミナーで、チェルノブイリ事故以降、原子力安全は国際的な問題になっており、現在旧ソ連原発のリスクを低減させるための包括的な協力を、G7各国と進めていることを述べた。 訪問の感想について藤家氏は、(1)カザフスタンでは経済・財政状況の逼迫により、研究施設のゴーストタウン化が進んでいる(2)他方、安全研究や被爆者疫学研究など国際協力の可能な分野で、活動の継続や施設等の更新が行われている(3)米は中露の中間緩衝地域としてカザフスタンに注目し、非核化への強力な後押しを人道的援助と科学研究協力を軸に遂行している(4)カザフスタンは原子力に期待しているほか、核実験による被爆国としてわが国との共通性を強く意識し、関係強化を望んでいる−などとした。
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