[原子力産業新聞] 2000年7月20日 第2047号 <3面>

[エジプト] 線源による被曝で2名死亡

入手経路を調査中

 先月始めにエジプトで農夫とその息子が放射線源による被曝で死亡した事件について、国際原子力機関(IAEA)は2日、国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル4に評定したことを明らかにした。

 エジプト原子力公社(EAEA)がIAEAに提出した報告書によると、5月にカイロ近郊のミートハルファに住む農夫がどこからか40キュリーの放射線を発するイリジウム192線源シリンダーを見つけ、金銭的な価値があるものと考えて自宅に持ち帰った。この農夫と9歳になる息子に被曝の最初の兆候が認められたのは5月6日のことだが、それが放射線によるものとはまったく気づかなかったという。数日後、農夫の夫人やほかの子供たちにも同様の兆候が現れたため病院に運ばれたものの、原因がわからなかったことから適切な治療が行われず、6月5日に息子が死亡したのに続き、11日後には農夫本人も死亡した。

 病院の医師達は6月26日になってようやく、死亡原因が高レベルの放射線被曝である可能性に気づき、保健省の官吏を通じて国防省およびEAEAに届け出た。その後、陸軍の特殊チームが農夫の自宅を捜索し、8時間後に線源を発見。これは遮蔽コンテナーに密封して輸送され、現在はインシャスにあるEAEAのホットラボ・センター内の放射性廃棄物および使用済み線源専用貯蔵所に安全に保管されている。

 その一方、保健省は農夫の家族や親族、近隣の住人約200名の健康診断を実施するとともに、村民への社会的、心理的な影響を考慮した支援活動を行っている。また6月28日にはエジプトのA.M.オベイド首相が被曝した農夫の家族を入院先で見舞ったと伝えられている。

 原因となった線源は医学用か工業用に作られたものと推測されているが、どのような経路で農夫の手にわたったかは調査中である。


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