[原子力産業新聞] 2000年7月27日 第2048号 <1面>

[ITER] ITER 計画懇が再開

国内誘致問題を検討

ITER 計画懇談会 (座長・吉川弘之日本学術会議会長) が24日、東京都内で開かれた。ITER 実験炉建設サイトの国内誘致の可否を含めて、ITER 計画に対するわが国の参画のあり方について議論を再開した。国内からは北海道、青森、茨城から誘致の声が上がっている。政府は、懇談会の議論を踏まえ、参加各極が正式な誘致提案を行う予定の平成13年半ばを目処にわが国としての誘致問題に結論を出す方針。ITER 計画実施協定については、平成15年早々の締結をめざす。

ITER 計画懇談会は、平成8年に、わが国として ITER 計画にどう参画するかについて広範な層からの意見を踏まえて進めるため、原子力委員会のもとに設置されたもの。設置後、平成10年3月までの議論で、誘致の判断をする上での課題を六つに整理。三つの委員会で専門的検討を実施してきた。このほど検討がとりまとめられたことから審議再開となった。平成10年度から ITER 実験炉の建設を含めた大型プロジェクトが政府方針によって実質3年間の凍結となっているが、今年度がその3年目にあたっている。コスト削減等に取り組んできた工学設計が最終とりまとめ段階にあることとあわせ、候補地の調整を含めた国内への誘致問題の扱いを再び検討すべき時期にさしかかっている。

この日の懇談会では、六つの課題のうち、四つの課題に相当する検討報告を聞き、意見を交わした。

そのうち長期的なエネルギー開発のシナリオのなかで核融合をどう位置づけるかについて検討をとりまとめた茅陽一慶応大学教授からは、21世紀の環境問題や資源問題の解決には「しっかりと研究開発をすすめるべき革新技術のひとつ」との位置づけが示された。各委員からは「基幹エネルギーとしての実用化には、エネルギー密度が高くないと難しい」、「再生可能エネルギーなどを含め、環境リスクを総合的に判断すべき」などの意見が出された。

ITER 計画を中心とする核融合開発の現状と今後に関する検討結果を報告した井上信幸京都大学教授は、固有の安全性や廃棄物問題など安全上の観点で、十分に成立性を有するとした。これについて各委員は実験炉設計をコンパクト化したことの技術的影響や誘致にともなう原子力産業の活性化、人材問題などの点で質疑、意見を交わした。

実験炉建設サイトの誘致動向に関しては、出席した遠藤哲也原子力委員から報告があった。同氏によれば建設サイトに関して EU の一員として参加しているカナダから非営利法人の ITER カナダがトロント近郊への誘致を積極的に呼びかけているほか、EU 内から強力な候補が名乗りをあげる可能性があるという。各委員からは「技術立国として日本への誘致は有益」、「日本に持ってきたらどうかという明確な説明が必要」などの意見が聞かれた。

次回は、9月上句に開催の予定。ITER 計画をめぐる国際的な動向などについての報告を聞き、検討する。


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