[原子力産業新聞] 2000年7月27日 第2048号 <3面> |
[OECD/NEA] ウランの需給報告書刊行「供給過剰傾向続く」経済協力開発機構/原子力機関 (OECD/NEA) は11日、「世界のウラン資源、生産、需要」 (通称レッド・ブック) の99年版を刊行し、「世界中で急速にウラン在庫の取り崩しが進んでいるにも拘わらず市場の供給過剰傾向は続いている」との結論を明らかにした。 レッド・ブックは NEA が国際原子力機関 (IAEA) との協力で毎年発行している報告書で、49か国からの公式情報に基づき、世界のウラン資源やその探査状況、生産量、需要量などを集計している。99年1月現在の情報をまとめた最新版によると、過去数年にわたり世界のウラン市場は生産側・消費側の両方が不確かな状況下に置かれている。世界の原子力設備が拡大する一方、ウラン生産量が需要の6割以下しか満たしていないことから在庫量は早いペースで取り崩されている。しかし、こうした傾向にも拘わらず、米国およびロシアの両政府が低価格のウランを放出しているため、ウラン市場の供給過剰は継続していくことが新たな情報から明示されていると指摘した。 99年1月現在のウラン資源としては、回収コストが130ドル/kgU 以下の既知資源量が世界で395万トンU と見積もられるとしたほか、回収コストが80ドル/kgU 以下の確認資源量 (RAR) は合計で300万トン程度、40ドル/kgU 以下の既知資源ついては125万トンU になったとしている。 98年時点の世界のウラン生産量は97年実績から5%減の3万5,000トンに留まっており、OECD 加盟国だけで見た場合は11%の減産となった。96年から98年の間にいくつかの国で見られた増産も、米国、ハンガリー、カナダ、フランスでの産出量低下を相殺することはなかったと報告書は述べた。 同報告書はまた、生産能力全体に目立った変化はなかったものの、産業界では新たに参入した規模の大きい低コストの業者達がコスト高の中小業者に取って代わるなど、経済効率の改善が進んでいることを強調。さらに、ウランを生産する22か国での計画をもとに2015年までを通じた世界の生産能力も予想しており、今回初めて、40ドル/kgU 以下で回収できる資源量に関して大方の生産能力を集計することに成功した。実際、既存の生産能力や2015年までに計画されている能力の累計である97万4,000トンU のうち、95%近くがこの価格で回収可能だと報告書は指摘している。 原子力発電所の操業に関わる世界の年間所要量は98年に天然ウラン換算で5万9,600トンだった。2015年までの予測は5万4,400トンから7万9,800トンと考えられるが、この「11%以上の減少から増加33%まで」の大きな幅は、将来の電力供給の中で原子力が果たし得る役割の不確定性をそのまま映し出したと説明している。
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