[原子力産業新聞] 2000年8月10日 第2050号 <1面> |
[フランス] 原子力の長期経済性を予測「競争力を持ち得る」原子力発電は長期的にも経済的な競争力を持ち得るとの結論を示唆する報告書がフランスで7月28日にL.ジョスパン首相に提出された。 全288頁のこの報告書は、主要な政策立案フォーラムである総合計画委員会の J−M.シャルパン、国民科学研究センター (CNRS) のB.デシュおよび仏原子力庁 (CEA) のR.ペラの3氏が昨年5月にジョスパン首相の要請を受けて調査・編集作業を進めていたもの。2000年から2050年までの期間を対象に、同国のエネルギー政策オプションに関して大々的な議論を行う際に必要となる技術的、経済的、生態学的な情報を提示することを目的としている。 エネ政策当局が将来のエネルギーを選択する上での指標としたり、世論に影響を与えることを意図したわけではないが、結果的に報告書は次のような2つの主要な結論を滲ませたものとなった。すなわち、(1)既存原子炉は早期に閉鎖されることがなければ、将来の膨大な電力需要を賄うという意味で唯一経済的に競合し得るコンバインド・ガス・サイクル発電よりもコスト面で優位性を保持すると思われる(2)対象期間を通じてガス価格が安定しない場合、原子力は新規の発電設備を建設する時期においても経済的な優位を保つ見込みがある−ということだ。 報告書は5つの部分に大別され、まず最初に原子力発電所の平均運転寿命を41年と45年に想定した2つのシナリオを分析した。ここではバックエンド政策として、(1)使用済み燃料の65%から75%を再処理(2)すべての使用済み燃料を再処理(3)2010年までにまったく再処理しない方針に転換−などとする選択肢を組み合わせており、原子炉を45年稼働させるシナリオでは全体として kW 時あたり6セントのコスト節約になる、再処理オプションは再処理しない場合に比べて約1%コスト高になる−などの結論を導きだした。 次に報告書は第2章で世界の原子力発電開発の現状を検証するとともに、化石燃料発電と原子力発電が環境に与える影響について評価。3章では省エネ、化石燃料と原子力および再生可能エネルギーの各分野で現在までの技術開発の進展状況と今後の開発規模を予想している。 続く第4章では、まず2050年までの電力需要を低いケースで5,350億kW 時、高いケースでは7,200億kW 時と予想。これら2つのシナリオに政府がエネルギー市場に干渉する可能性のある4段階の度合いを組み合わせて6つのシナリオを考案した。「高ケース」の3種類のうち2つでは新規の原子炉建設を想定しており、2050年までの原子力シェアは50%から80%になると指摘した。また、「低ケース」シナリオの3つのうち1つでは2050年の原子力シェアは50%と予測している。 第5章で報告書は、4章で考案した6つのシナリオを使って原子力とガスの発電コスト比較を試みている。しかしここでは将来のガス価格がさらに3種類に変動することが考慮されており、実質的に一定レベルで安定か、2020年までに最高47%上昇、もしくは2050年までに88%上昇すると想定。原子力は「変化なし」のシナリオを除いて全てのシナリオで競争力を維持するとともに、対象となっている50年の間は平均発電コストで優位を保ち続けると指摘した。
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