[原子力産業新聞] 2000年8月24日 第2051号 <2面>

[三菱重工] APWR+、世界最大175万kW 級めざす

燃料の長尺化で炉容器など大型化せず対応

三菱重工業は、敦賀原子力発電所3、4号機に採用される改良型PWR (APWR) 以降をにらんで、さらに出力をアップさせた「APWR+」の概念検討に入っている。出力は175万kw クラス、炉心下部の構造を簡素化することで、炉心燃料の長さを現行の12フィートから14フィートにする。その分、装荷燃料を増やすなどして、原子炉容器は APWR と同規模のまま、175万kW クラスの出力にアップさせる。また炉心下部構造の簡素化により、炉容器を現行の炉より下方にレイアウトし、構造的に強化して、耐震性などの一層の向上をはかる。さらに緊急時の炉心注水系統に静的な安全設計を導入するなど、経済性と安全性、両面からのグレードアップをめざす。

APWR は、国の第3次改良標準化計画に沿って三菱重工業を中心に開発されたもので、日本原子力発電が計画している敦賀原子力発電所3、4号機に採用される。炉心や蒸気発生器などの主要機器に改良技術を盛り込んで大容量化をはかり信頼性や経済性を向上、同時に、現行で世界最大となる百153万kW を実現する。安全面でも、炉心の構造を簡素化、また安全系統を改良して多重性・独立性を高めるなどの技術対応を行って炉心損傷の確率を一桁低く抑える。また廃棄物発生量そのものを抑制し、処理設備も高度化をはかっており、作業線量を低減するなどの対策が盛り込まれる。

「APWR+」では、これらの新鋭技術を継承、高度化すると同時に、近年の立地状況も踏まえて、さらにスケールメリットを追求、175万kW クラスヘの出力アップを実現する。技術的には、燃料棒を現行の12フィートから14フィートに長尺化することでウラン燃料の装荷量を増やすとともに、蒸気発生器の熱交換比率をあげるなど熱効率向上をはかるもの。これまで、炉内の中性子計測といった核計装機器を炉心下部から挿入していたが、これを上部から挿入する構造にかえて、下部の管台を削除するなど炉心下部構造の簡素化を行ない、炉容器の高さを APWR と同程度の13m強のままで燃料棒の長尺化を実現する。燃料集合体の数は APWR と同じく17×17形式で257体、したがって炉容器の内径も変わらない設計だ。14フィート燃料は米国での使用実績がある。

また炉容器からの冷却材出口温度を APWR の325度Cから327度Cにあげるとともに、炉内から蒸気発生器への循環ポンプの流量と蒸気発生器の熱交換比率をそれぞれ2割程度向上させることで熱効率を一層改善し、出力増強を果たす。

そのほか、安全面では、同社が長年独自に開発してきた数々の技術も投入していく考えだ。例えば、LOCA (冷却材喪失事故) などへの対応を想定して設置する高性能蓄圧タンクもそのひとつ。従来、炉心へのホウ酸水注入は蓄圧タンクと動的な駆動方式を並用していたが、これを静的 (重力等の自然の力を利用する) 設計として動力源に極力依存しない方式とする。動力源等の機器を省けることから経済性の向上にもつながるもので、実規模試験などを経て技術の確証を終えており、APWR にも先行導入されることになっている。

同社では今後、定例説明会などの機会をとらえ、電力業界にこの最新型軽水炉の開発状況を紹介していく方針だ。


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