[原子力産業新聞] 2000年8月24日 第2051号 <2面>

[原子力安全委員会] 初の地方開催を東海で

村長など地元が要望

原子力安全委員会は11日、茨城県東海村の東海文化センターで、「原子力安全の確立に向けて〜臨界事故の反省とその後の取組み〜」を基調テーマに、第1回の地方安全委員会を開いた。JCO 臨界事故の反省と防災対策の強化、再開に向けた東海再処理施設の安全性など、喫緊の課題を取り上げ審議が行われた。

会合には松浦祥次郎原子力安全委員長をはじめ原子力安全委員4名、村上達也東海村長、長鳥徳一郎茨城県生活環境部長のほか、服部幹雄科学技術庁原子力安全局次長、藤冨正晴通産省資源エネルギー庁審議官が出席。さらに前田充原子力事業所安全協力委員会委員長 (日本原子力研究所東海研究所所長)、梅津皙ニュークリアセイフティーネットワーク (NSネット) 事務局長も参加した。

地元を代表して挨拶した村上村長は「安全委員会の権限、機能のさらなる拡充を望んではいるが、国民から期待される活動の一環としての原子力安全委員会地方開催は画期的な試みである」として、第1回会合が東海村で開かれることを歓迎した。さらに「安全は数字で表せるが安心は表せない。現代人は技術社会でいう安全でなく、それより上位の安心を求めている」と、数日前同村で開催された農業とエネルギーに関するシンポジウムでの木村尚三郎東大名誉教授の話しを引用し、「14の原子力事業所と共生する東海村民の求めているものは安心であり、この意味からも安全委員会の役割は絶大である」と述べた。県を代表して長島生活環境部長は、臨界事故を踏まえて県が実施した原子力防災・安全対策の強化について紹介するとともに、今後も地域に対し「顔の見える原子力安全委員会の活動」を継統していくよう要望した。

この後、個別のテーマについて報告と質疑に移り、まず「臨界事故の反省に立った原子力安全確立への取組み」に関して、科技庁や資源エネ庁に加え、民間からも NS ネットならびに、東海村近隣市町村に所在する21の原子力事業者が締結した原子力事業所安全協力協定に基づく活動が報告された。委員からは、NS ネット加盟事業者が安全対策を講じる上で協力業者からのデータも十分に考慮しているのかとの質問がなされたのに対し、現場の協力業者には NS ネット加盟事業者自身を通じて安全意識を高揚させると同時に、協力業者からもフィードバックを図りたいと説明した。

続いて、「東海再処理工場再開の安全性」の議題ではまず科技庁が、97年3月の火災爆発事故以来、核燃料サイクル開発機構が実施してきた安全対策が適切であると確認したことを報告。これを受け委員からは、「東海再処理施設は運転年数も長く、運転停止以前より異常事象の確率が増えているのではないか」「施設での緊急時の通報体制・情報伝達システムに改善は見られたか」などの質問があった。一方会場からは、訓練中に起こったバルブの閉め間違いによる硝酸廃液の漏えいについて、問題が指摘された。

「原子力災害への備え」というテーマについても、行政庁から原子力災害対策特別措置法の制定や各種の防災計画について説明が行われた。長島県生活環境部長より、原子力災害時に現地では誰がリーダーシップを取るのか、原子力安全委員会がその任にあたれないのかとの発言があり、松浦委員長からは現地や本部において科学・技術的見地から適切な助言を行うことで委員会の責任を果たしたいとのコメントがなされた。さらに青木委員長代理が、緊急被曝医療面での防災計画を見直すための検討を作業部会が開始していることを紹介した。

また、原子力安全文化に関連し、村上村長が「安全文化といわれているが精神論的に過ぎるようだ。安全文化の根底には人命や人権を尊重することがあり、それを支えるシステムを創り出す必要がある」と発言したのに対して、松原委員からも個人的にとした上で、個々の機器等の安全性審査だけでなく、今後は安全委員会や専門部会も安全に関わる包括的な議論をするために努力し、「安全目標」の概念を社会に提供していきたいとの考えを示した。

原子力施設立地地域に「顔の見える活動を行いたい」とする同委員会の初の地方開催を評価する声は多かった。同委員会では今回の実施状況を踏まえ、可能ならば次回の地方安全委員会を年内にも開催したいとしている。


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