[原子力産業新聞] 2000年9月7日 第2053号 <2面> |
[原研] 電子ビームでダイオキシン分解既設の焼却炉に付設可能日本原子力研究所は、近年深刻な問顕となっているゴミ燃焼排煙中のダイオキシンを電子ビームによって分解・除去する試験を今年度と来年度にわたって実施する。試験設備は高崎市ほか4町村衛生施設組合の高浜クリーンセンター敷地内 (群馬郡榛名町高浜) にこのほど完成し、試運転を経て今年10月から本格的に試験を開始する予定だ。 今回の試験ではゴミ燃焼排煙の一部に電子ビームを照射して分解・無害化し、照射した排煙中のダイオキシン濃度を新設炉の規制値である0.1ng / 立方m以下にまで減少させることを目標とする。来年度の試験終了後、プロセスを技術的、経済的に評価し、実用性を確認した後、民間会社、地方自治体などへ技術移転する予定だ。 電子ビームを排煙に照射することによって、排煙ガスの主成分である窒素、酸素、水から、環境汚染物 (例えばダイオキシン) と極めて容易に反応する物質 (活性種) が生成される。今回の試験はこの原理を利用し、複数の塩素と2つのベンゼン環から成るダイオキシン分子から塩素を外すことやベンゼン環を断ち切ることによって排煙の無害化を狙うもの。 従来の電気集塵器やフィルターによる除去方法では、ダイオキシンはそのままの形で捕集されるため、再度、分解処理する必要があった。これに対して、電子ビームによる方法では(1)ダイオキシンを直接分解するため、二次公害の恐れがない(2)温度の制御が不要(3)プロセスが極めて簡単で既設の焼却炉に容易に付設できる−などの特徴があるという。 原研は、これまでに電子ビームを用いて、石炭燃焼排煙などから酸性雨の原因となる二酸化硫黄 (SO2) と窒素酸化物 (NOx) を除去する技術や発ガン物質のトリクロロエチレンなどの揮発性有機塩素化合物を分解する技術の開発を実施してきた。 健康への影響が懸念されているごみ燃焼排煙中ダイオキシンについては、その濃度の規制強化に伴い、対策技術の開発が急がれている。 一般的な処理法としては、焼却炉でダイオキシンが付着した煤塵を電気集塵器やフィルターで除去するのみで環境中に放出している。さらに、高度除去対策として、排煙中に気体状で存在するダイオキシンを活性炭の吹き込みや活性炭吸着塔による吸収除去や触媒反応塔による分解除去などが試されているが、処理効果が温度に依存するなど、必ずしも技術は確立されていない。
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