[原子力産業新聞] 2000年9月7日 第2053号 <3面> |
[カナダ] 核施設とがんの関連性調査「住民の健康に影響なし」カナダの原子力安全委員会 (CNSC) は8月25日、オンタリオ州ポートホープ町にある放射性物質取扱い施設が住民の健康に及ぼす影響について調査した結果、がん全般の発生率は州全体と同程度だったことを明らかにした。 この調査は、1930年代以降同町の環境中に放出されてきた放射性物質などの増加に対する町民達の不安を受けて、CNSC が連邦保健省の科学者達に委託して行ったもの。CNSC の声明によると、ポートホープ町のラジウム処理施設やウラン鉱石処理工場での長年にわたる操業は、地元環境への低レベル放射性廃棄物放出のほか様々な工事現場での汚染盛土の利用につながった。鉱物工場の存在はい<つかの地区で土壌の重金属汚染という問題を引き起こしており、カメコ社が CANDU 炉用燃料製造のために同町で運転するウラン転換施設に関しても、放出物質のレベルを懸念する声が住民達の中で強まっていた。 調査を担当した科学者達はポートホープ町でのがん発生率と比較するためオンタリオ州全体のがん登録データを用いたほか、町内のがん患者の症例をつぶさに審査。その結果、同町におけるがん全般の発生率は州全体で予測できる発生率、人口レベルとまったく同じという結論に達したとしている。州内のほかの4地区と比較しても結果は同じで、放射線その他の物質の影響によるがん発生の特殊なパターンは認められなかったと指摘した。 また、白血病リスクや甲状腺がん、乳がん発病の可能性は原則的に大量の外部被曝により増大すると考えられているが、放射線被曝によって特に敏感に誘発されるという小児白血病でさえ、予想できる範囲を超えて発生した証拠は見つからなかったと CNSC は強調している。 CNSC は結論として、「今回の調査によりポートホープ町のがん発生パターンがほかの地区やオンタリオ州全体とも違わないことが判明したが、発がん性があると認識されている物質が同町の環境中で増加しているのも事実だ」と指摘。それらのレベルは住民の健康に悪影響を及ぼすほど高くないものの、CNSC としては今後も慎重に同区域でのがん発生率を監視していく考えであると述べた。 また、CNSC はそのための具体的な一方策として、近年の調査結果を評価したり将来実施する調査の方向性や必要性について勧告することを目的とした健康調査諮問委員会の設置を提案している。
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