[原子力産業新聞] 2000年9月14日 第2054号 <1面>

[ITER計画懇] 国の研究資源配分は必要と報告

加・仏の動向にらみ国内誘致を議論へ

ITER 計画懇談会 (座長・吉川弘之日本学術会議会長) が8日、東京都内で開催され、ITER をめぐる研究資源の配分や国際関係に関する検討のほか、非公式政府間 協議の状況が話し合われた。

この日はまず、98年3月の段階で今後専門的に検討すべき課題として提示された事項のうち、研究の資源配分と国際協力の責任分担に関する検討結果について、検討委員会座長をつとめた村上陽一郎国際基督教大学教授が報告書にそって説明した。

報告書は「ITER は、我が国の長期的なエネルギー源の確保への最初のステップとしての働きが期待され、先端的技術であり、巨額の投資を伴う大型施設の建設によりブレークスルーが初めて可能になることから、民間ではなしえない。我が国が高い研究・開発ポテンシャルを有する核融合分野であり、主導的役割を果たすことができる」と述べ、我が国は「欧米諸国の努力により蓄積された科学・技術的知見を利用し、産業競争力の強化に成功し、今日の繁栄を築くにいたったという歴史的負債を返済していく」責務からも、ITER への資源配分を考慮すべきとしている。

さらに、国際協力プロジェクトにおける責任分担について、ホスト国となった場合に利益と不利益の両方があると指摘したうえで「科学技術政策や研究的側面で中核的役割を果たせ、国内発注による経済効果もあるなど、ホスト国にとり利益が大きいようだ」としている。

これらの報告に関して、委員からは、「超長期的な ITER 計画の評価をリスク評価も含めてだれがどのように行うのか。プロジェクトからの撤退のメカニズムは考えられるのか」「核融合の卓越した研究拠点になることが、国内に ITER を設置することの利益というが、ホスト国となることで多くの技術等を提供せざるをえないこともある」といった意見が出された。

この後、科学技術庁が多極による非公式政府間協議の進展状況について紹介。同協議は ITER 共同実施取り決めに対し共通理解を促進するため4月に開始した。これまで、(1)約5,000億円と見積られる実験炉本体の建設費のうち超伝導コイル等主要機器に要する約4,000億円のほか、年間の運転費用約300〜400億円はなるべく参加国で均等負担する。サイト整備費用はホスト国負担(2)ITER 事業を実施するための国際法人を設置する(3)資機材等の国際的移動を容易にするための努力や、外国人研究者にとり魅力的な生活環境の整備を図る−などの議論が進められているという。

海外の ITER 誘致をめぐる状況をみると、カナダでは民間組織の「ITER カナダ」がオンタリオ州クラリントンでの建設に向け、積極的に活動を展開中。年末までに連邦および州政府に正式提案を提出する予定だという。現在カナダは ITER プロジェクトの極としての立場にはないが、日欧露の3極が合意すれば特段の問題はないとの見方がある。またフランスも最近、原子力庁が中心になりトカマク型実験装置のあるカダラッシュ研究所への誘致を検討中だと伝えられている。今秋に予定される EU 研究大臣理事会では、議長国フランスの研究大臣を中心に ITER 建設をにらんだ審議が行われる模様で結果が注目される。

我が国への誘致をめぐっては、TTER 計画懇談会での方針をもとに原子力委員会の見解を明らかにしたいとの意見が出された。科学技術庁としては、まず日本への誘致が最善かどうかを判断したうえでサイトを絞り込み、来年中頃の正式なサイト誘致につなげたい考えだが、委員からは「候補サイトが確定してからでないと誘致そのものに迫力を欠くのでは」といった意見が述べられた。


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