[原子力産業新聞] 2000年9月14日 第2054号 <3面>

[IAEA] 将来型炉開発支援で特別委

革新的技術の重要性強調

ウラン協会が4日付けで伝えたところによると、ロンドンで開催されていた同協会の年次シンポジウムで、国際原子力機関 (IAEA) のV.モーロゴフ事務次長 (原子力局担当) はIAEAが革新的な原子炉と燃料サイクルの技術開発を促進する目的で、特別委員会を設置する考えであることを明らかにした。

モーロゴフ次長によると、IAEAは今年11月にもこの特別委員会における目標と活動範囲を最終的に決定するため、上級科学指導者の会合をウィーンで開催する。現段階では、(1)将来型の原子炉および燃料サイクルの需要を世界レベルで調査・評価する(2)これらの概念に関する技術的な特徴を審査してまとめあげる−などの初期提案が挙がっていると言う。

モーロゴフ次長は、今日の原子力発電は将来の役割について一致した見通しが定まらないままターニング・ポイントを迎えてしまったと指摘。世界の総出力需要の6分の1以上を賄うなど、大規模な経済成長を維持させつつ二酸化炭素を排出しない唯一の成熟した発電技術でありながら、さらなる開発を前に北米や西欧では経済的、あるいは政治的な様々な試練に直面。発展途上国においては開発に必要な適切なインフラや専門知識、資金が不足していると説明した。

これに続けて同次長は、「このような問題の解決には技術、法的あるいは制度的な枠組み、監督管理などの相関する3つの分野での努力が重要だ」と指摘。しかしながら、実際には多くの産業が技術的な突破口を通じて開発されてきたという事実を忘れるわけにはいかないと強調している。モーロゴフ次長によれば、技術開発というものは主として、(1)現在稼働中の商業施設の改善(2)既存施設の適度な改良も含めた設計上の進展(3)新機軸を大々的に打ち出した革新的な設計−から発展するもので、(1)と(2)の開発パターンは今後20年以内なら通用する。しかし、原子力発電を世界規模で拡大させる基盤となるような次世代型の原子炉と燃料サイクルの開発は革新的な原子力技術の開発に頼らざるを得ないと断言した。

モーロゴフ次長はさらに、アルゼンチン、カナダ、中国、フランス、インド、イタリア、日本、韓国、ロシア、南アおよび米国では、すでにこのような革新的な原子力技術開発研究が始まっていることを指摘。これらの例として南ア・ESKOM 社のペブルベッド式モジュール型高温ガス炉 (PBMR) やロシアの海上浮遊式原子炉開発プロジェクトなど、小型で単純な設計、大量生産による経済的メリットのある原子炉開発計画を紹介した。同次長は、将来型設計の原子炉は欧米諸国の規制緩和された国だけでなく、電力網への接続が困難な途上国でも魅力的なものとなるはずだと明言した。


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