[原子力産業新聞] 2000年9月21日 第2055号 <2面>

[台湾] 原子力シンポジウム

立地・PA、廃棄物で議論

龍門 (第4) 原子力発電所建設の可否を巡って揺れ動いている台湾の台北市で5日、焦点となっている立地・PA と放射性廃棄物処分問題を中心に、第2回原子力シンポジウムが開かれ、2名の日本人専門家が講演を行った。

シンポジウムは、中國工程師学会 (工業学会) が主催し、原子力関係者、民主進歩党関係者、マスコミ、および一般市民も対象として、原子力に関する正しい知識・情報を提供する目的で開催された。日本原子力産業会議は台湾原子力委員会と協力して、土田浩・前六ヶ所村村長と東邦夫・京都大学教授を講師として同シンポジウムに派遣。両氏はそれぞれ「誘致決断から15年」「日本における放射性廃棄物の安全性評価について」と題する講演を行った。

土田氏はまず、現代社会で大量のエネルギーを消費し、豊かな暮らしを享受している我々にとって、エネルギーの安定供給に協力することは公共の利益に合致すると強調。エネルギー安定供給に寄与するよう原子力を安全に推進する責務があると述べた。15年前に六ヶ所村に原燃サイクル施設の立地要請を受けた際、このようなことを念頭に誘致を決断したものの、施設建設までの地元との社会的問題の解決は容易ではなかったと振り返った。その結果、建設開始から10年目の1996年には、村は自主財源のみで財政を賄える地方交付税不交付団体となり、村民の年間所得等も全国に比べて遜色のない内容となるなど、六ヶ所村では経済面で大きな前進があったと総括した。プルトニウムの利用、高レベル廃棄物の処分、FBR 計画の再開等、現在我が国の原子力が直面している課題についても、国民が公共の利益に対する自己の責任を自覚し、推進していかなければならないと指摘した。

一方、京都大学の東教授は、六ヶ所村の低レベル廃薬物処分場について、設置許可申請から安全審査を経て、申請者側が3回の設計変更を行い許可が下りるまでの経緯を、主に技術的な側面から説明。同教授はまた、適切な技術的・社会的措置が取られれば、どこの国においても低レベル廃棄物は十分安全に処分可能との見通しを述べた。一方、現在検討が行われている高レベル廃棄物処分については、非常に保守的な技術的仮定をおいて地層処分場を検討しても、実際の処分が始まる数十年後までの科学技術の進歩も考慮すれば、地層処分を非常に安全に実施することは可能との見通しを示した。


台湾では、5月に民主進歩党の陳水扁新政権が発足した。民進党は現在建設中の龍門原子力発電所計画の見直しを選挙公約としており、陳水扁総統は同計画の評価委員会を設置、委員会は16日夜に最終会合を開いた。同委の推進派と反対派の意見は最後まで平行線のまま、結局両論を併記した報告書を林信義経済部長 (通産大臣) に提出した模様である。林経済部長は今月末にも建設続行の是非を行政院 (内閣) に報告する予定。最終的には陳総統が決断を下す事態になる可能性もある。


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