[原子力産業新聞] 2000年9月21日 第2055号 <2面>

[原研] SPEEDI で火山ガスを分析

三宅島の火山噴火がもたらす火山性ガス−都内でも、各所で「硫黄臭い」と異臭騒ぎになったのは8月28日のこと。火山性ガスとの関連性についての分析結果を日本原子力研究所が7日公表した。

原子力事故時に放射性物質の大気拡散をリアルタイムで予測するために開発した計算システム SPEEDI と世界版 SPEEDI を基盤に、さまざまな環境汚染に対応できるよう対応を進めており、今回その一環として8月28日に関東西部を中心に発生した火山性がスによる異臭騒ぎと三宅島噴火との関連を、コンピュータシミュレーションにより詳細に解析した。

気象庁の日本域気象予報データをもとに、8月28日の3次元的な風の流れと大気の安定状態を大気力学モデルにより1時間毎に予測し、高さ2,000mの柱状の噴煙を模擬した多数の粒子群を風下に拡散させて、二酸化硫黄 (SO2) 濃度の時間変化を解析した。その結果、28日の午前0時から2時頃に放出された SO2 が、南から南南東の風に乗って関東西部に到達し、さらに海風に乗って栃木、群馬方面に拡散していると推定された。また、午前4時から5時頃に放出された SO2 は、南南東の風により伊豆半島の方向に流され、半島の山塊の影響で平野部に達し、静岡、山梨方面に影響を与えていると推定できた。これらは、環境庁の「大気汚染物質広域監視システム」で観測された高濃度汚染の出現地域ともよく一致した、このことから、異臭の原因が夜間に三宅島から噴出した火山性ガスであることは、ほぼ確実、と原研では判断、今後再び関東地方で異臭が発仕する可能性は残るが、「秋季にむかい同様の条件が現れることは減少する」としている。


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