[原子力産業新聞] 2000年9月28日 第2056号 <1面> |
[長期計画] 「意見聴く会」スタート意見を集約し年内にも最終案原子力委員会長期計画策定会議は27日、東京・品川で第1回目の「ご意見をきく会」を開催した。会合には那須翔策定会議座長をはじめ、策定会議委員や藤家洋一原子力委員会委員長代理らが出席し、一般からの公募も含め10名から長期計画案に対す意見を聞いた。長期計画策定そのものの意義を問う意見や、長計では原子力の信頼回復を重要視すべきとの意見などが出された。 この日の会合には約200名が参加。冒頭、那須座長は「原子力の開発利用は国民生活にも深く関わり関心も高いことから、幅広く国民から意見を募集するとともにご意見をきく会を開き、長期計画の審議に反映させたい」と挨拶した。 最初に意見を述べた西尾漠原子力資料情報室共同代表は「そもそも長期計画が必要であるとは考えていない。国と民間の役割を明記したことは評価できるかもしれないが、国が民間の活動を誘導する施策を講ずるとしても国会決議が必要」と指摘。女優の大山のぶ代氏は、日本人が原子力を利用し始めた頃の丁寧さが失われているとしたうえで、「来世紀は謙虚にエネルギーを生産し、謙虚に使う」態度が求められると訴えた。 中島尚正東京大学教授は、「原子力関係者全休の信頼回復が、長期計画における重要課題として取り上げられるべき」との意見を述べるとともに、原子力の専門技術者が広い視野を持ち、総合的な知識や倫理観に基づく行動規範を備えていることか必要だとした。そのため、安全管理・危機管理・倫理観の維持等において他分野の人々が模範とするほどの高いレベルを保てるよう、人材の育成方法が検討されるべきと提案した。 飯田哲也日本総合研究所主任研究員からは、長期計画案には電力自由化の時代に原子力発電の経済性の視点が欠けているとの指摘がなされ、電気事業者の負担をはじめ経済的リスクの責任の所在を明確にするよう求めた。あわせて、我が国の原子力関連技術の多くが輸入されたもので独自の技術文化が育っていない中で、高速増殖炉の開発を進めることに懸念を示した。 このほか、国民が放射線に対して理性的に受け止められるよう環境の整備を促す意見も聞かれた。放射線教育フォーラムの代表幹事を努める松浦辰男氏は「原子力への価値判断に影響を及ぼす放射能や放射線について、学校教育の現場で正しい知識を普及していくことが何よりも重要」と発言した。 こうした発言者の問題提起や提案に応ずる形で、策定会議委員からは審議過程での議論の様子を説明するなど、双方向から意見を述べる機会ともなった。次回は、10月2日に青森市で行われる。
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