[原子力産業新聞] 2000年9月28日 第2056号 <6面> |
[放射線利用] 経済規模は8.6兆円幅広い利用の現状浮き彫りに放射線利用の規模が総額で約8兆6,000億円、国内総生産の1.7%を占める−国民生活に広く浸透している放射線利用規模の姿が、このほど科学技術庁の調べで明らかになった。 わが国の放射線利用の広がりを示す客観的なデータとして、その経済規模を体系的にまとめたのは今回が初めてで、科学技術庁が日本原子力研究所に委託したもの。1997年度時点での工業、農業、医学・医療の3つの分野を調査した。 工業利用では、放射線発生・計測装置と放射線加工工業製品の出荷額 (売上高) を算定した。農業利用については、放射線利用による農産物 (品種改良、照射食品) および放射線利用で出荷可能になった農産物 (ウリ等) の出荷額をまとめた。医学・医療に関しては、患者が病院に支払った診断・治療代金 (診療報酬代金) を調べた。 このうち、工業利用については、半導体製造をはじめコバルト照射や電子加速器などの工業用照射設備やエックス線診断装置などの医療用照射設備、あるいはタイヤや電線などの放射線加工などの分野をあわせて7.3兆円と算定。半導体の加工が73%のシェアで、放射線加工が15%、照射設備が6%、放射線滅菌は4%などとなっている。 農業利用では、RI 利用を含めて総額1,167億円となっている。うち、ナシやイネなどの品種改良が83%を占め、総額973億円にのぼる。沖縄や奄美群島におけるミバエ根絶などの害虫駆除や、馬鈴薯の発芽防止などを含めた照射利用に関しては165億円、全体の14%となっている。RI 利用は29億円、3%を占めている。 医学・医療分野は、総額1兆1,905億円で医科・歯科の診断が主で1兆900億円と全体の91%を占めている。医科部門をみると、エックス線撮影診断が5,072億円と同部門の47%を占め、コンピュータ断層撮影が3,978億円と37%を占めている。核医学診断は1,252億円で12%を占めている。放射線治療は564億円で5%のシェア。 なお、原子力発電などエネルギー利用と合わせた規模は16兆円にのぼり、1997年時点での国内総生産494兆円の3.2%に相当するという。16兆円のうち放射線利用は54%を占めており、裾野の広さが浮き彫りとなっている。
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