[原子力産業新聞] 2000年10月5日 第2057号 <4面>

[サイクル機構] FBR実用化戦略の視点

2015年メドに実用化候補提案へ

核燃料サイクル開発機構の大洗工学センターを拠点とした高速増殖炉 (FBR) サイクルの実用化戦略研究が、2015年を目標に実用化技術の候補具体化をめざしている。サイクル機構をはじめ関係機関の総力を結集して、社会的なニーズ変化にも柔軟に対応できる魅力的な FBR 技術のオプションを練り上げる方針で、来年度からの第2期目には工学試験も含め、2〜3の候補へと絞り込みをはかる考えだ。今号でその取り組みを紹介する。


内外の技術力を結集

「高速増殖炉 (FBR) サイクルの実用化戦略調査研究」は、9電力会社と電源開発、日本原子力発電、電力中央研究所、日本原子力研究所、ほかメーカーが参画する「オールジャパン」体制をとり、プラントシステムや再処理技術、燃料製造などの技術的なオプションを幅広く候補にあげて、検討・契約へと研究を進めている。来年3月末にも竣工予定の「FBR サイクル国際研究開発センター」を拠点として、安全性を大前提に、軽水炉サイクル及びその他の基幹電源と比肩する経済性を達成し、将来の社会の多様なニーズに柔軟に対応できるよう開発戦略を提示する。同時に、FBR サイクルを将来の主要なエネルギー供給源として確立する技術体系を整備する高い目標を掲げている。現在、策定中の原子力開発利用長期計画では「代替エネルギーの最有力候補」として評価されると同時に、「将来のニーズ変化に柔軟に対応できる」技術体系の確立が求められている。現在の軽水炉に競合し代替しうる技術的なポテンシャルを幅広い観点から検討し、「安全性」をはじめ「資源有効利用性」「環境負荷低減性」「核拡散抵抗性」「技術的実現性」「経済性」の6つの視点で評価、候補の絞り込みを行う。

1999年7月にスタートした同研究の第一期では、革新技術を採用した幅広い技術選択肢の検討評価を行い、実用化戦略を練る上での判断基準と有望な実用化候補概念を抽出、このほど外部評価により「妥当との評価」を得た。

研究テーマは大別して、FBR システム (炉心燃料とプラントシステムをいう)、燃料サイクルシステム。

FBR システム (炉心燃料とプラントシステムをいう) の検討にあたっては、燃料形態としてビン型燃料 (酸化物、窒化物、金属)、ヘリウムガス冷却炉用として被覆粒子燃料 (酸化物、窒化物) および溶融塩炉用として液体燃料を、冷却材としては、ナトリウム、重金属 (鉛、鉛ビスマス合金)、ガス (炭酸ガス、ヘリウムガス)、水 (軽水、重水、超臨界圧水)、溶融塩を選定した。なお、出力規模としては、大型炉および中小型炉を選定した。

検討の視点のうち、最も重要な安全性に関しては軽水炉と同等ないしはそれ以上の安全性を確保するものとし、受動的安全性やシビアアクシデント対応、ヒューマンエラー防止などを掲げている。

コストダウン方策としては、FBR システムの検討では、安全性の向上を図りつつ建設費のコストダウン方策についての検討を中心に進める。

たとえばナトリウム冷却炉については、ループ数の削減、機器合体、新材料の採用等のシステム改善、スケールメリットの追求およびモジュール化による標準化・習熟効果等により、軽水炉と比肩し得る経済性を達成できるシステム概念を追及している。目安として、発電単価を kW 時あたり約6円としている。


既存設備などフル活用

第2期の目的は、FBR サイクルの実用化候補概念の絞込みと、実用化に向けて必要な研究開発テーマの特定にある。FBR サイクル全体の整合性に十分配慮しながら、実用化候補概念として、有望な2〜3の候補に絞り込む方針。また、国内外の研究資源の有効活用方策等を検討し、2015年頃までに競争力ある FBR サイクル技術を整備することを目標とした研究開発計画をまとめる考えだ。

さらに、第2期では、それ以降の研究開発に向けた研究環境・インフラストラクチャの整備等にも着手する必要があるとしている。

第2期の研究の枠組みについては2003年度までの3年間を1つの区切りと考え、各候補概念の設計研究や必要最小限のキーポイントとなる要素試験等を実施し中間的な取りまとめを行うこととしている。3年間の成果について、研究開発課題評価委員会で中間評価を受け、その結果を踏まえて2004、2005年度の研究内容を見直し、選択肢の絞り込みを進める計画とする。

炉心燃料については、高燃焼度化と TRU 含有燃料の実現性の確認を重点として、酸化物燃料の研究開発から立ち上げる。新型燃料 (金属燃料、窒化物燃料) の研究開発は、国内外の他機関との協力が不可欠であり、2000年度の検討の中で協力関係の具体化を進め、製造技術等の本格的な立ち上げは2002年度からにする計画。

プラントシステムについては、第一期での有望概念の抽出を受け、ナトリウム冷却炉2概念 (大型炉と中型モジュール炉を対象に、二次系簡素化炉を含めて検討)、ガス冷却炉1概念 (2000年度の検討で、ヘリウムガス炉か、炭酸ガス冷却炉のどちらか一方を選択)、重金属冷却炉1概念 (鉛ビスマス冷却中型モジュール炉)、小型炉2概念 (ナトリウム冷却炉と鉛ビスマス冷却炉) を対象に概念設計を進める。要素技術開発では、ナトリウム冷却炉の経済性向上と、ガス冷却炉および鉛ビスマス冷却炉の成立性確認が重要としている。

再処理と燃料製造については、サイクル全体で評価して有望概念を選択することとしている。再処理については、湿式法では第一期で提案した先進湿式法を対象に、また、乾式法では2概念 (酸化物電解法、金属電解法、フッ化物揮発法から2つ選定) を対象に概念設計を深める。燃料製造については、簡素化ペレット法、振動充填法、鋳造法の概念設計をさらに進める。要素技術開発では、燃料サイクル関係全般に設計データが不十分であるため、設計を深めるために必要なデータの取得に重点をおく考え。なお、要素技術開発に用いるホット試験施設として、東海事業所の CPF (ホットセル) の改造を進めており、2002年度から活用する予定だ。

FBR サイクル全体では、総合的な評細手法の開発・整備を進め、選択肢の定量的な比較評価を可能にするとともに、リサイクル機器試験施設 (RETF) 等既存設備の利用計画の検討を進め、開発ロードマップを完成させることとしている。設備の利用計画を実行に移すためには、第2期から R&D のインフラストラクチャの整備にも着手する必要があるとしている

主として第2期終了後に利用する主な施設・設備としては、「常陽」および照射後試験施設については、2006年以降、本格的に燃料・材料の照射に活用するが、第2期ではその準備を進める。

「もんじゅ」については、2010年以降、実用化戦略調査研究で選択した革新技術の確認や集合体規模での燃料の照射等に活用したい考え。

RETF については、2006年以降に、湿式再処理法、乾式再処理法両者の工学試験に活用することを考える。このため、第2期では施設設計の見直し検討を進める。


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