[原子力産業新聞] 2000年10月5日 第2057号 <5面> |
[電中研] 低線量放射線研究センター発足「ホルミシス研究の中核に」電力中央研究所は1日、同研狛江地区内に「低線量放射線研究センター」を発足させた。 約10年前から外部の研究者と共同で、放射線ホルミシス研究に取り組んでいる電中研は、短期照射という条件付きではあるもののホルミシス効果の存在をほぼ確認するなど数々の成果を挙げており、現在の「低線量放射線の影響を見直す機運」の世界的な高まりに大きく貢献してきた。 こうした中、電中研ではこの流れをより大きなものとするためには、「低線量放射線研究を自ら行う、専門家として信頼される組織が共同研究をプロモートして、低線量放射線研究の全国ネット結成の中核となり、国内外への情報発進を積極的に推進する」ことが必要な時期にきていると判断。同センターを発足させることにより、研究および外部との情報交流などを、より一層強化することとした。 同センターは、(1)線量率と照射時間を変えた動物の照射実験を自ら行い、ホルミシス効果が生じる領域を特定および、機構の解明をさらに進める(2)ガン抑制、活性酸素関連疾患など医療への応用も視野に入れた外部との共同研究と委託研究をプロモートし、わが国における低線量放射線研究の中核となる(3)研究をコーディネートする体制として「低線量放射線研究委員会」を設置し、運営にあたる(4)データベースを構築して最新の研究情報を発信できる機能を充実させ、さらには放射線影響を正しく理解してもらうための PA 活動を支援し、原子力に対する社会的不安の軽減に役立てる−といった活動を通して、「わが国における低線量放射線研究を中核となって推進・支援し、その成果を積極的に発信することにより、現在の放射線防護に係わる基本概念の見直しを促し、放射線防護基準の緩和や原子力に対する社会的な不安を軽減するとともに、医療への適用を図る」という目的の達成を目指す。所長は夏目暢夫理事がつとめ、当面は15名程度でセンターを運営していく。 同センターの活動計画としては、現在のところ(1)2002年度までは低線量率、低線量放射線の発がん抑制効果の検証、放射線適応応答の機構解明を2本柱として研究を進めるとともに、低線量放射線に応答する生体機能を解明するプロジェクト研究を推進(2)2003年度以降は前年度までの研究成果に基づき、発がんリスク、活性酸素関連疾患の抑制機構の解明に重点を置いた研究を推進−して、これら各種研究を通じて「しきい値なし直線仮説」見直しに 結びつくような客観的根拠と、人体に対する放射線リスクの正確な評価につながる科学的データを取得し、発信していくことを計画している。 なお来年4月25日には、東京・千代田区の経団連ホールにおいて、センター設立を記念した第1回シンポジウムの開催も予定している。
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