[原子力産業新聞] 2000年10月12日 第2058号 <2面> |
[原安技センター] 20周年記念講演会開く緊急時の情報伝達など原子力安全確保の課題原子力安全技術センター (中村守孝会長) は4日、東京都千代田区の KKR ホテルで創立20周年記念の「報告と講演の会」を開催した。 開会挨拶に立った中村会長は、同センター設立以来の業務拡大の経緯を紹介するとともに、最近では六ヶ所村での再処理工場建設に関わる溶接検査が繁忙を極めていることや、特に JCO 臨界事故以来原子力防災業務が急速に増加していることに言及、鴻坂厚夫理事は、同センターにおける最近の原子力防災業務として、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム (SPEED I) の運用状況や防災技術センターの活動等を報告した。 続いて、前原予力安全委員長で同センター顧問の佐藤一男氏から「わが国における原子力安全の課題」と題する特別講演が行われた。 佐藤氏は「ここ数年発生している原子力の不祥事に共通するものは、安全の意識が風化し安全に取組む姿勢が安易となった結果、組織と個人の社会的責任感の欠如や倫理の頽廃がしたことが挙げられる。このため原子力安全や、原子力そのものに対する国民の信頼が根底から揺らいだ」と指摘した。「原子力がわが国にとってどれだけ必要であっても、国民の信頼と支持がなければ社会に存在しえない。信頼と支持の基盤となるものは安全の確保である」としたうえで、原子力をさらに国民に開かれたものとするため、受信する国民の何らかの意思決定に役立つ情報を発信する努力が求められるとした。一方、緊急時における外部への適切な情報提供を可能にするためには、内部での緊急時の情報伝達システムを確立しておくことがまず必要だと述べた。 また JCO 事故発生後に臨界を終息させるため日本原子力研究所やサイクル機構の臨界安全の研究者らが重要な役割を果たした点を挙げ、安全研究は施設の安全性を評価し向上するうえで不可欠であるとともに、事故発生時の対応に極めて重要な役割を果たすものであり、省庁再編が行われる中、安全研究を具体的に支えていく研究資源の確保が緊急の課題であると指摘した。 佐藤氏はさらに、「日本人はリスクといった望ましくないものからなるべく目をそらしていたいという願望があるようだ」としたうえで、我々をとりまく多様で膨大なリスクの存在を正確に認識し、冷静に対処するための社会全体での体系的な対応が必要であり、意識改革を行わなければならないと強調。原子力は技術面や考え方において、これまで新しい側面を切り開き実現してきた実績があり、「安全目標」の概念など、社会に先鞭をつけて安全確保の新しい考え方を構築していくよう積極的に取り組む必要性を訴えた。
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