[原子力産業新聞] 2000年10月12日 第2058号 <3面>

[スイス] 政府、原発運転年数に上限設けず

原子力法改正で最終案に盛り込む

スイス連邦政府は2日、同国の原子力法改正に伴い、原子力発電所の運転年数に制限を設けないとする公式見解を発表した。この政府勧告を盛り込んだ最終原案は来年3月までに議会に送られ、最長で2年間審議されることになっている。

今回の政府見解は、先月の住民投票でミューレベルク原子力発電所の早期閉鎖や原子力への課税を目的とする複数の提案が反対多数で否決された丁度1週間後に公表された。連邦政府は今年3月、原子力法の改定案として使用済み燃料の再処理停止などいくつかの項目を提示しており、それらを公開協議の場で議論した結果をまとめた内容になっている。

主な結論は次の3点。すなわち、(1) 国内原子力発電所の運転年数に上限を設けるべきではなく、安全性が確認されている限り操業が許可されるべきだ。ただし、保守点検作業は現在の安全レベルが維持されるよう適宜実施する必要がある (2) 現時点で技術的に利用可能と見積もられているより低いレベルで原子炉の運転年数を設定してしまうことは、スイス経済に多大な損害を及ぼす (3) 政府としては3月、既存の再処理契約が切れた後は使用済み燃料の再処理を禁止することを提案した。しかし、公開協議における全国規模の議論では大多数が「再処理の正式な禁止に反対」の見解を示した−など。連邦政府はまた、このような結論に集約されるまでには様々な議論があったとし、その経過を次のように紹介している。

--原子力に対する個々の意見は「今後も原子力を利用」から「脱原子力」まで幅広く見られたが、明らかに大多数が原子力オプションの維持に賛成を表明 --少数意見だが原子炉の運転年数を30年から60年の間で設定しようという案も出た --再処理禁止に賛成する少数意見の中には「直ちに中止」を望むものもあった --原子炉の廃止措置や廃棄物の管理など長期的な義務についてはすべての原子力運転者の共通責任とする案が大多数の支持を得た --大多数が使用済み燃料の地層処分を承認したが、環境保護団体は監視付きで回収可能な長期貯蔵を主張 --新規の原子力発電所建設に一般許可を与えるか否かに関しては、反原発派の人々が国民投票の場で是非を問えばよい。


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