[原子力産業新聞] 2000年10月19日 第2059号 <2面>

[ITER] 安全確保の基本的考え方まとまる

免震採用して対震安全性を向上

科学技術庁の原子力安全局は16日、ITER (国際熱核融合実験炉) の工学設計をにらみ、ITER 施設の安全規制に関する基本的な考え方をとりまとめて原子力安全委員会に報告した。

原子炉安全技術顧問の意見を聞き、プラズマ閉じ込めで発生する磁場等の特徴を含め ITER の基本的な特性を考慮し、安全確保の基本的な考え方と当面設計に反映すべき事項をまとめた。

検討では、ITER 施設の安全上の特徴について、核的暴走がない、プラズマの圧力限界、密度限界による反応終息性といった核融合固有の安全性をあげる一方、ITER が本来の機能を果たす上での特徴として真空容器の気密性、電磁力に対する真空容器や超伝導コイルの構造強度をあげている。また放射性物質を内臓した機器の過圧の可能性をあげている。

これらの特徴を踏まえて、平常時においては ALARA で定めた放射線障害防止の考え方を、また事故時には、深層防護の原則にそった緩和措置の設置を求めており、平常時には従事者被曝レベルを年間20ミリシーベルト以下に、公衆に対しては年間100マイクロシーベルト以下に抑制する安全対応を求めている。

また事故防止に関しては、基本的に十分な構造的強度と、必要に応じた圧力逃がし機構の設置を求めている。また事故時の緩和措置について、放射性物質の閉じ込め、耐震、動的機器の多重化による放射性物質の除去といった各機能を盛り込む設計対応が必要としている。その際の公衆に与える影響として、ICRP の補助的線量限度に準拠した5ミリシーベルトの公衆の実効線量当量を判断基準に置くものとしている。さらに漏洩トリチウム等による火災・爆発の可能性もあわせて検討することが必要と指摘している。

このほか、耐震性の確保のため、特に ITER のようなトカマク施設に関しては、動作温度の異なった複数の機器が柔軟な支持構造で支持される必要性をあげており十分な耐震性を確保するために免震技術の採用を求めている。

また立地上の考慮に関しても、本格的に DT 燃焼が長時間実施される実験装置であること等から、設計基準事象を超える放射性物質の放出を想定して、ITER 施設と公衆との隔離の適否や敷地外におおける緊急時計画 (防災対策) の必要性の有無を評価するべきとしている。


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