[原子力産業新聞] 2000年10月19日 第2059号 <4面>

[調査] JCO後の原子力発電に対する意識を分析

7割が利用を肯定

原子力安全システム研究所の社会システム研究所はこのほど、JCO 事故後、原子力発電に対する一般公衆の態度がどう変化したかを調査した。それによると回答者のうち、約7割が「利用やむなし」を含めて原子力利用を肯定している結果が明らかになった。


同研究所では、設立された当初から、原子力発電に対する一般公衆の態度を把握するため、エネルギーや原子力発電に関する質問選択肢と自由記述からなるアンケート用紙を配布して回収する形で、定期調査を含めて5回実施してきている。JCO 事故後の調査については、関東、関西地域を対象に昨年12月に実施したもので、約7割の回収率を得た。個々の質問にあらわれた変化や、関東、関西の地域差、男女の差などについて分析した。

分析の結果、原子力施設事故に対する不安は、もんじゅ事故後に高まり、98年に低下する傾向がみられたが、JCO 事故後は「非常に不安」が統計上有意に増え、不安感が高まったことがわかった。また原子力発電所に働く従事者のイメージ低下がみられ、電力会社に対して社員教育の充実を望む声が高まった。この点で JCO 事故で指摘された問題点に相応していると分析している。

原子力発電利用に関してはその重要度や有用度、あるいは環境への影響といった8つの項目を質問選択肢に含めて、その回答された選択肢をスコアに置き換え平均値を算出したものを「総合指標」とし、「とても非好意的」から「とても好意的」までの五つの態度に分類するという統計的な手法を用いて、原子力発電への態度を分析した。

分析の結果、「利用もやむを得ない」が回答者全体の約6割、「利用するのがよい」という回答者とあわせて約7割が原子カへの依存を肯定しているとの結果が明らかとなった。またこれまでに実施した調査を時系列的に分析したところ、調査を始めた93年当時とくらべてほとんど態度に有意な差が認められなかったことから、長期的にみると、原子力発電への一般人の態度に関して JCO 事故が及ぼした影響は案外大きくないとの見方もできるという。地域差については統計上の有意な差は認められなかったことがわかった。

男女差については、女性のほうに、大事故への不安や原子力発電所に携わる関係者 (従事者や幹部) へのイメージ低下がみられるなど、男性にくらべて女性のほうが比較的事故の影響を受けているとの結果になった。

なお、同研究所では、JCO 事故から1年を経た時点での同様の調査を実施する方針だ。

調査の概要
種類調査時期標本抽出方法地域サンプル数回収率
第1回定期調査1993年1月層別2段系統抽出関西150075.9%
もんじゅ事故後調査1996年2月層別2段系統抽出関西750 74.9%
アスファルト固化施設事故後調査1997年5月層別2段系統抽出関西75071.0%
第2回定期調査1998年7月層別2段系統抽出全国300070.1%
関西150070.3%
JCO事故後調査1999年12月層別2段系統抽出関西75070.9%
関東75070.1%
98年調査解答者関西105461.1%
・調査方法・質問紙配布留置白記式

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