[原子力産業新聞] 2000年10月26日 第2060号 <12面>

[原子力発電技術機構] 防災、廃止措置などで報告会

フルMOX炉心性能、成立性を確認

原子力発電技術機構は23日、東京都千代田区の経団連会館で「第19回報告と講演の会−原子力発電施設の安全を求めて」を開催、この1年間にわたる研究成果を発表した。

冒頭挨拶に立った松田泰理事長は、「最近の数か月間は、原子力発電所の増設計画、高レベル廃棄物処分実施主体の設立など原子力の前向きな動きが徐々に現れている。原子力は人類が授かった科学技術。欧米では政治的に弄ばれるなどしているが、原子力は人類社会から決して捨て去られるものではない。眼前のいろいろなことに惑わされずに長期的に取り組んでいくことが我々の課題だ」とするとともに、「近く開かれる COP6 においても、温暖化対策上、原子力発電が決め手となる技術であると認識されることを強く期待する」と述べた。

続いて、藤冨正晴通産省資源エネルギー庁審議官は、報告されるテーマはすべて我々が現在直面している課題を扱ったものでタイムリーであると評価するとともに、28日に島根原子力発電所で実施される総合防災訓練で、発電技術機構の運用している緊急時対策支援システムのデータを訓練のシナリオに利用することを紹介した。

報告会ではこのあと、高城眞同機構専務理事の事業概要の説明のあと、1999年度の試験研究の成果が報告された。まず、「廃止措置技術の蓄積とその展開」と題して、廃炉設備確証試験の成果について小栗プラント機器部長が発表。

解体前放射能低減技術の開発や、原子炉遠隔解体技術の開発について披露したほか、建屋残存放射能等の評価技術確証試験の一環として作製した床面放射能測定装置の実機への適用性を、原電東海発電所を活用して確認したことを紹介した。

さらに、山本システム安全部長は「軽水炉でのプルトニウム有効利用に向けて−高減速 MOX 炉心−」との報告を行い、その中で現在のプルサーマル計画以降をにらんだ中長期的技術選択肢を得るため、炉心設計目標、燃料集合体概念の検討、炉心概念の設定・評価、炉心導入の効果等に関して研究結果を披露した。

なかでも、プルトニウム有効利用炉心を導入した場合の効果については、国内の核燃料サイクル環境において2050年時点で、MOX 燃料を装荷する発電所数の減少やプルトニウムによる発電量の増加、使用済み MOX 燃料に残るプルトニウムの減少を定量的に確認できたという。さらに、MOX 燃料を全炉心に装荷した炉心において、核分裂性プルトニウム消費割合を高める炉心概念を確立し、その炉心燃料特性、核燃料の物質収支、プラントの安全性を評価し、その成立性を確認したとの研究成果を発表した。

報告会ではこのほか、計算機シミュレーションによる原子力発電所の安全裕度評価研究の発表や、「日本を取り巻く世界情勢」と題して、前駐タイ大使の岡崎久彦氏による講演か行われた。


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