[原子力産業新聞] 2000年10月26日 第2060号 <2面>

[山口県] 上関計画で「意見を聞く会」

新設問題めぐり地元の声を汲み上げ

中国電力が山口県・上関町に計画している上関原子力発電所1・2号機建設について、山口県は23、24日の2日間にわたり、「県民の意見を聴く会」を実施した。この会は、二井関成山口県知事が、計画が進んで行く段階で知事の意見を求められる機会があることから、「その際の判断材料のひとつにしたい」として開催したもので、23日には小郡市で、24日には柳井市で行われた。

日程2日目となった「サンビーム柳井」には、平日にもかかわらず約1,000名の傍聴者が来場。その中で建設に賛成、反対の立場に立つ発言者が各15名ずつ登壇し、それぞれの視点から所見を披露し、知事に理解を訴えかけた。

両者の意見の論点は、「発電所建設は地域の振興につながる」「環境問題に原子力発電は有効」「原子力発電は経済性に優れている」「日本は資源に乏しい」− (建設に賛成の人々) などのほか、「脱原発は世界の流れ」「(JCO 事故を例に) 危険」「地域振興で地元が潤うのは一時的なこと」− (反対を主張する人々)など。

また、これら意見のほかでは、建設に反対の意見を持つ人々のうち、田布施町に住む男性は「西日本の地震は、現在活性化しつつある」と述べ、当該地区にはこれから地震の増加が見込まれるとの説も出されているとして、原発建設に対する不安を強調。また、同じく田布施町に住む男性は、「上関原発計画が表面化してからというものの、『賛成』『反対』の意見の対立により、町のムードが一変して、自由に物が言えなくなってしまった」と述べ、原発建設により、地域住民に軋轢が生じているとした。

一方、建設に賛成の意見を持つ人々は、「事故を起こした JCO 施設と原発とは全く異質の施設」(柳井市・男性)、「今の生活を維持していくためには、環境破壊を最小限にするエネルギー源を選択すべき」(田布施町・女性) といった意見のほか、65歳以上の高齢者の人口に占める割合が43%超、毎年100名程度の人口が減少しているという上関町の現状から、立地点となる上関町在住の男性から、「このまま何もしなければ、上関町に未来はない。原発は町を救う切り札だ」という、切実な訴えも出された。

上関原発建設計画は、31日に第一次公開ヒアリングが予定されているが、これとは別に自治体主催で公聴会を開くのは北海道、島根県に続いた三例目のこと。二井知事は今回出された意見も材料のひとつに加えて、今後の判断に当たって行く。


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