[原子力産業新聞] 2000年10月26日 第2060号 <5面>

[IAEA] 核融合会議開かれる

先進トカマク研究で進展

第18回 IAEA 核融合エネルギー会議が、4日から10日の日程で、イタリアのソレントで開かれた。

この会議は、核融合研究に関する成果報告及び情報交換を行うことを目的として1961年から開催されているもので、前回は2年前に横浜で開催された。

ソレントでの会議には、36か国及び3機関から721名、わが国からは177名が参加した。会議は、開会セッションでの総合講演のほか、個別セッションが設けられ、プラズマ実験、加熱・電流駆動、核融合技術、慣性核融合、ITER、理論等のテーマで発表が行われた。

主な発議内容として、磁場閉じ込め実験に関する発表の中で、JT-60 をはじめとする先進トカマク運転の研究、大型ヘリカル装置、および球状トカマクの研究において大きな進歩があり、また、世界的な研究の連携により、ITER に必要なプラズマ特性の理解がさらに進展したことが発表され、JT-60 からは、負磁気シアプラズマ方式による高閉じ込めの新しい連続運転方法、高エネルギー NBI による世界最高の電流駆動効率の実現を始めとする先進トカマク研究の進展が報告された。

新しい体制で運転を開始した JET (欧州) からは、強磁場側からの粒子ペレット入射によるHモード、新古典テアリングモードの発生条件など、ITER に向けたデータベースの充実について発表された。慣性核融合については、米国の国立点火実験施設 (NIF) は建設予算が2倍に膨らみ、実験開始も6年ほど遅れて2008年になる見通しが示されるとともに、大阪大学からは、100TWレーザーを用いた高速点火実験において、入射したレーザーが中心部の高密度領域にまで到達できることが報省された。

また、炉工学と ITER については、コスト半減を目指した ITER-FEAT に関する一連の工学設計及び超伝導コイルなど工学研究開発の成果が発表され、ITER 建設の技術的見通しが得られたと評価された。理論・計算機シミュレーションの分野では、微視的乱流から自己形成される帯状流の構造や安定性の解析が進むとともに、原研を中心に、従来困難であった電子系運動論モデルのシミュレーションとそれに基づく内部輸送障壁形成の物理機構の解明が大きく進展した。さらに、プラズマ中の複数の微視的モードと巨視的 MHD モードの相関等、時間・空間スケールの異なったモードの階層間での相互作用を考慮した理論・シミュレーション研究が日本及び欧州から提案された。

なお、次回会議は2002年にフランスのリヨンで開催される予定。


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