[原子力産業新聞] 2000年11月2日 第2061号 <2面> |
[原文振] 「原子力の日」記念シンポメディア社会のあり方さぐる日本原子力文化振興財団 (大山彰理事長) は10月26日、東京・有楽町の朝日ホールで第37回「原子力の日」記念シンポジウムを開催した。 同シンポジウムは毎年多彩な顔ぶれがパネリストとして参加し、原子力やエネルギーといった話題を中心に討論の場を設けている。今回はテーマとして「21世紀に向けての情報・メディア・社会」が取り上げられた。 まず、主催者を代表して挨拶した大山彰理事長は、「情報技術の急速な進歩が今後の社会に大きな影響を与えることは間違いなく、我々はその恩恵とともに様々な問題に出会うだろう」と述べたうえで、「原子力やバイオテクノロジーといった科学技術の正しい知識を提供し国民の判断の基礎とするにはどうすべきかも課題の一つ」であるとし、シンポジウムで共に考えていきたいと締めくくった。 続くパネル討論では、宮崎緑千葉商科大学助教授をコーディネーターに、作家の井沢元彦氏、佐藤一男原子力安全技術センター顧問、ジャーナリストの嶌信彦氏、田崎耕次共同通信社科学部長、千野境子産経新聞論説委員、科学ジャーナリストの中村政雄氏らをパネリストに迎え、討論を行った。 まず嶌氏は、現代のメディアは確固とした原則をもって事実を早く公正に伝えることはもちろん、分析力が重要になってくると語り、提案したり構想を打ち出していく力が必要だとした。 原子力に関わる情報をめぐって、佐藤氏が「原子力だけに限ったことではないが、どういう情報にどういう価値があるのかという点で、当事者とメディアのとらえ方が違う」としたうえで、「意思決定を行うための材料となるのが価値のある情報。情報伝達の手段が高度に発達した社会では、発進側と受信側に事前の意志疎通がないと、意味のない情報だけが溢れてしまう」と指摘した。 これに対して嶌氏は、原子力分野の情報はメディア側も原子力関係者も「構えてしまう」性格のものであるためこれまであまり広く情報として出さず、その結果不信感が高まってきたのではないかと述べた。 千野氏は、報道において当然ながら迅速・正確・平易の3点が重要であるとし、原子力報道で難しいのは、専門性が要求されるニュースである一方、影響度が非常に一般的な広範囲の影響をもたらすものだとの意見を披露した。あわせて JCO 事故の事例を挙げ、原子力に対しては「正しく恐れること」が重要だとも語った。 情報の扱い方をめぐって、井沢氏は、日本人は情報の扱い方が下手であり惑わされやすいことを取り上げ、これからは情報の分析力が問われるだろうと指摘した。 最後に、中村氏は話題となっている IT 革命のあるなしに関わらず、メディアの役割は今後ますます重要になるとし、メディアに情報を提供する側も的確に報道してもらうための工夫や努力が必要である点を強調。さらに日本新聞協会の調査を引用し、原子力報道だけでなく一般報道も正確さ公平さに対する評価か低くなってきていることを挙げ、「メディアに携わる人はしっかりした態度で報道に努めなければならない」との考えを述べた。 |