[原子力産業新聞] 2000年11月9日 第2062号 <2面>

[電中研] 原子力の CO2 排出量は28g

原子力の優位性示す

電力中央研究所はこのほど、火力、水力、原子力、太陽光といった発電方式別に、それぞれのライフサイクルで発生する CO2 総排出量を、「ライフサイクルアプローチ」という手法を用いて算定し、結果を発表した。

発電を行う際に発生する CO2 は、燃料が燃焼する時に排出されるものばかりでなく、燃料の生産や運搬に加え、発電所の建設、廃棄に至るまで、多くの場面で CO2 発生がともなうのが実情。ライフサイクルアプローチはこの実態を踏まえて環境負荷を評価する手法のことで、特に今回は、温暖化の影響が CO2 の21倍と大きいメタンについても、その排出量を CO2 排出量に換算したほか、設備利用率といったパラメータが変化した場合の値の変化についても示されるなど、多くの工夫もされているという。

モデルプラントを想定した算出の結果、原子力発電の発電所のライフサイクル全体を通した1kW 時発電時あたり CO2 排出量は、炭素換算で28g となり、火力や太陽光に対して CO2 排出面については非常に優位にあることが明らかになった。また原子力発電の CO2 発生の多くを占めるウラン濃縮工程において、石炭火力の多い米国でガス拡散分離法により濃縮したウランを用いた場合、濃縮過程における CO2 排出量はライフサイクル全体の4分の3を占めるが、わが国の遠心分離法を用いて濃縮したウラン燃料を用いた場合は、 CO2 排出量は更に減少し、9g になるということだ。

一方他電源について見ると、火力については炭素換算で石炭火力955g、石油火力747g、LNG 火力608g、LNG 複合火力519g となっており、石油および石炭火力については、燃焼にともなう直接排出 CO2 が排出の大半を占めるほか、燃料の輸送距離が大きく影響することが。また LNG については、LNG を液化する際の排出および、NG (天然ガス) の中に含まれる CO2 の影響が大きいことがわかったという。また自然エネルギーについては、太陽光53g、水力11g、地熱15g、風力29g となっており、水力、太陽光、風力では発電設備建設にともなう排出が全体の約8割を占め、地熱の場合は補充井の追加掘削などで、運用時の排出が多くなる傾向にあるということだ。

これら設備建設にともなう CO2 排出量が大きな割合となる発電方式は、設備利用率が5ポイント変化するだけで、数値に大きな影響が出ることが明らかになった。

なお、今後の生産規模の拡大などにより、太陽光26g、風力20g まで排出量を低減できる可能性があるとしている。


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