[原子力産業新聞] 2000年11月9日 第2062号 <5面>

[原研/昭和電線] 耐放射線性の小型モーター開発

パルス運転模擬条件クリア

日本原子力研究所 (村上健一理事長) はこのほど、昭和電線電纜 (權正信行社長) 等の協力により、中性子線とγ線が同時に照射される環境下で使用可能な小型モーターの開発に成功した。

国際熱核融合実験炉 (ITER) に設置される「増殖ブランケットテストモジュール」は、核融合反応で発生した中性子で照射されるが、そのテストモジュールを製作するためには、小型のテストモジュールを用いて、材料試験炉 (JMTR) で ITER パルス運転を模擬した条件で中性子を間欠的に照射する「試験先行照射試験」を行い、あらかじめ設計データを取得する必要がある。

この先行照射試験を実施する場合、原子炉内で窓付きの中性子吸収体を回転させるため小型モーターが必要となる。しかし従来、中性子線とγ線が同時に照射されるところで使用でき、かつ中性子吸収体窓の停止位置を任意に制御できる小型のACサーボモーターはなかった。また、放射線の種類 (中性子線、γ線等)、照射温度等によりモーター構成部材の劣化特性も異なり、これまでのγ線のみの試験結果から、中性子線とγ線が同時に照射される時の特性変化を推定することは困難であった。

このため原研では、低γ線環境で使える小型ACサーボモータの基本設計と中性子線・γ線同時照射試験で得たモータ構成部材に関する知見等を活用して、44種類のモーター構成部材のうち、21種類を耐放射線性材料に変更し、小型ACサーボモーター (直径 2.5cm、長さ 3.6cm) を試作した。

このモーターについて JMTR で中性子線・γ線同時照射試験を行った結果、所期の目的である中性子線量及びγ線量に対して、少なくともγ線量で従来品の約30倍まで使用できる十分な性能を持っていることが明らかになり、JMTR での ITER パルス運転模擬照射試験の実現に目処が立ったとしている。

今回の開発により、これまで照射後試験のみで実施されてきた照射データを原子炉内で取得することが可能になり、さらに炉内での疲労試験やクリープ試験にも応用でき、中性子照射による劣化が少ない原子炉材料開発への貢献も期待できるとしている。


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