[原子力産業新聞] 2000年11月9日 第2062号 <5面>

[東海大] 公開原子力シンポジウム開催

放射線利用などテーマに

東海大学工学部原子力工学科が主催する公開原子力シンポジウムが3日、同大学湘南校舎で開催された。

同シンポジウムが行われるのは今回が2回目。この日はまず、主催者側から同学科の横地明教授が幅広い原子力・放射線利用の現状と今後の展望について講演した。さらに、「将来のエネルギー利用を考えるとき環境や材料の問題を抜きにしては考えられない」として、同大学は来春、工学部全体を再編成したうえで、エネルギー工学専攻課程の中に原子力エネルギーと新エネルギーの両コースを設けることを明らかにした。

続いて、シンポジウムに招かれた原子力安全技術センター特任参事の河内清光氏が「がん放射線治療の最前線」と題する講演を行った。その中で同氏は、放射線治療では臓器などの機能が温存されるため外科治療に比べ治療後の生活の質が高いにもかかわらず、わが国のがん患者の放射線治療は2割程度であるとするとともに、的確な説明を受けた患者は放射線治療を選ぶケースが多いことを紹介。また、わが国には LINAC (線形加速器) が700台以上ある一方で、放射線治療医の数は多くないと指摘したうえで、今後の放射線治療の拡大に期待した。

さらに、河内氏は今年春まで勤務した放射線医学総合研究所に設置されている重粒子線がん治療装置 (HIMAC) によるがん治療の現状を紹介した。同治療法は、優れた深部線量分布を特長としてもち、生物学的効果の特長を生かし、従来は放射線抵抗性を持つと考えられた腫瘍に対しても制御が可能だと説明し、正常な組織への影響を極小化しつつ深部にあるがんの治療に適していることを示した。

シンポの会場隣には、放射線に関する知識の普及を図るため展示パネルや放射線測定実習コーナーが設置され、一般参加者が訪れ、実際に測定器を手にしたり質問するなどしていた。


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