[原子力産業新聞] 2000年11月16日 第2063号 <2面>

[電中研/NAGRA] 高レベル処分で協力協定

研究強化はかり円滑な事業推進を支援

電力中央研究所は13日、高レベル放射性廃棄物の処分技術について、スイスの放射性廃棄物管理共同組合 (NAGRA) と包括的な研究協力協定を締結した。

高レベル放射性廃棄物および TRU 廃棄物の処分に関して、電気事業の中央研究機関としての立場から必要な技術開発を進めている電中研だが、この中で高レベル放射性廃棄物処分については、本格的地下研究施設が未整備なわが国として処分に必要な技術の実証および基礎的なフィールドデータを取得する必要性などから、スウェーデン核燃料廃棄物管理会社 (SKB) とのエスボ島ハードロック地下研究施設 (結晶質岩系) における国際共同研究を1991年より実施しており、1999年からは実規模スケールの処分技術実験フェーズに入るなど着実な成果を挙げている。

1972年に放射性廃棄物処分に関する研究開発と処分の実施を進めるために設立された、スイスの放射性廃棄物処分実施主体である NAGRA は、低・中・高レベル放射性廃棄物の処理処分に関する地下研究施設での最先端の研究 (結晶質岩のグリムゼル地下研、堆積岩のモンテリー地下研) やサイト選定調査を先駆的に進めており、特に最近では国際的協力関係を重要な位置づけとして展開している。

わが国では高レベル放射性廃棄物の最終処分地として、堆積岩もひとつの有力な候補岩種とされているものの、まだデータが少ないのが現状。このことから電中研では、わが国と同じような山国で、かつ結晶質岩や堆積岩のフィールドを持つスイスの NAGRA と、高レベル放射性廃棄物を中心とした放射性廃棄物の処分技術に関して包括的な研究協力協定を結ぶことにより、緊密的な研究協力関係の基礎を構築し、今後の研究協力を着実に発展させ、双方の処分事業の推進に一層寄与していくこととした。

13日には東京・千代田区大手町の電中研本部において、電中研の佐藤太英理事長と NAGRA のイスラー理事長が出席し、研究協力協定に関する調印式が実施された。

電中研は今後、わが国の商レベル放射性廃棄物処分実施主体である原子力環境整備機構や電力などによる処分事業の円滑な推進を支援していくために (1) 地質地下水環境の調査評価技術 (2) 安全評価手法 (3)その他処分技術など'(4)安全かつ合理的な処分を行うための技術の開発、高度化と実証−を目指して、特に有力な処分候補岩体のひとつであり、かつわが国が蓄積したデータの少ない堆積岩の研究を中心に行っていく考えだ。


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